《第二十四話》 ページ25
その男の朝は早い。
音を立てないよう細心の注意をはらって慎重に寝室から出ると10分で自分の身支度を全て整えた。
彼は雇われの身。主人のために尽くすここからがようやく彼の一日の始まりと言っても過言ではない。
構えたのは使い慣れたモップ。少しでも衛生的に主人が食事できるように隅々まできれいにする。
だがデキる男は仕事を終わらせるのが早い。これも10分少々で終わった。
今度は献立を考えようとして、あっ、と男は思い出した。
『今度、オクタヴィネルに行く可能性が高かったような……』
途端料理を美味しいものから弱い睡眠薬入りのものに変える。
男は思い出す、かの寮のモストロラウンジに訪ねたときに睡眠薬を盛られたことを。
自分に耐性がなければどんな事になっていたか。恐怖。
その時、特徴的な音が鳴った。主人のかけるアラーム音である。
ところがこの主人、早い時間にセットするくせして起きない。
Aはそんな主人にサンドバッグという素晴らしいあだ名をつけていた。それだけ迷惑しているのである。
Aは主人の寝室に行く。ノックしても反応がないことを確認して部屋に入る。
図々しくもベッドに腰を掛ける。主人は寝ているため、されるがままという風。
普段の鬱憤晴らしにもってこいのこの状況。普通に起こすのはつまらない。
しばらく間抜けな面で、よだれを垂らし眠りこける主人を見つめる。
普段被り通してAしか知らない仮面の下の顔はなかなかに整っていて。
Aは今すぐその顔の上でダンスしてやりたかった。
腹いせと言わんばかりにAはクロウリーに一つの魔法をかけた。
「痛っ！？」
瞬間飛び起きるクロウリー。まだはっきりとしない意識の中で部屋を見渡す。
なんとなく状況を把握したクロウリーはベッド脇で無表情だが揚々とした雰囲気を出すA見て一喝。
「どこに主人を熱気で起こす秘書がいるんですか！？」
先程Aがかけたのは、相手を熱気で包む魔法だった。
失敗しなければ命に別状はないし、体にもない。何度も言うが、失敗しなければ。
『何、馬鹿なこと言ってるんですか。 そんな秘書いるわけ無いでしょう。ほらご飯冷めますよ？』
しかしそれをさも知らないかのように接するのがAクオリティ。
いや、貴方以外こんなことを朝っぱらからするわけ無いでしょう…。
クロウリーは一人ブツブツと呟き、Aから仮面を受け取った。
これが彼らの毎朝の光景である。
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好好爺(プロフ) - 星詠みさん» コメントありがとうございます！！早速更新させていただきました！気づいたら亀更新してしまう作者なので度々教えてくれると助かります……！ (9月28日 23時) (
レス) id: eeb0faecb7 (このIDを非表示/違反報告)
星詠み(プロフ) - 続きいつでも待ってます‼︎ (9月28日 22時) (レス) @page17 id: 674129e800 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：好好爺 | 作成日時：2023年9月19日 14時
