《第十一話》 ページ12
『おはようございますユウさん。 こちらに来て初めて朝はどうでしょうか』
「思ったより快適に過ごせました」
『そうですか。それは何よりです』
朝、ユウが起きた瞬間、寮の窓から見えたのはAの姿だった。
向こうも気づいたようで小走りでこちらに来る。その手にはバスケットを持っている。
慌ててきた彼の最初の一言は意外なものであった。
『……昨晩はうちの鴉が失礼しました。 お詫びと言ってはなんですが、朝食です』
うちの鴉……言わずもがな彼の主である学園長のことである。
昨夜、唐突にこのオンボロ寮を訪ねたかと思えば、幽霊になって攻撃する？
異世界に飛ばされた人間に対する初日の対応じゃない。
異様にニコニコ笑顔で帰ってきた学園長に拷も……問い詰め、説教をした。
すぐにでもユウに謝りに行きたかったが、その話を聞いた時間があまりにも遅すぎた。
全部、敏腕経営者のアズールのせいである。おかげで帰るのが随分と遅くなってしまった。
まさかAの紅茶に睡眠薬を混ぜるとは。
耐性がなかったら今頃も夢の中であったろう。
「ツナの匂いがするんだゾ！」
「ちょ、グリム！？」
匂いに釣られ寝ぼけ眼だったグリムがAに飛びついてきた。
実はバスケットの中身は朝食用のツナの入ったサンドイッチ。グリムへの謝罪だ。
一方のユウはそれを引き剥がそうとするも全く動かないグリムにほとほと呆れていた。
「ほんとスミマセン……」
『いえ。お気になさらず。それより早く朝食を取ってしまいましょう。
あと30分ほどでここを出なければ初日から遅刻ですよ？』
「遅刻？」
思わずユウは聞き返す。確かに学園長に来いとは言われていた。
でも具体的な時間設定はしておらず。本人としてはあと一時間後の予定だったのだ。
『もしかしてのバカ鴉……じゃなくてただのバカ、集合時間を言ってないんですか？』
「はい。それよりその私怨が隠った言い方はやめましょう。 怖いです」
『……アホ学園長』
「せめて特定出来ないようにしてあげてください」
そんなやり取りをしている間にも時間は刻々と過ぎていく。
気づけばもう登校しなければいけない時間になっていた。
『掃除道具は持ちましたか？』
「持った！」
『ハンカチ』
「イエッサー！」
『ティッシュ』
「オーケー！」
『スマホ』
「こっちにもスマホあんの！？」
ドタバタとした朝を迎えユウは学校に向かった。
生徒ではなく、雑用係として。
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好好爺(プロフ) - 星詠みさん» コメントありがとうございます！！早速更新させていただきました！気づいたら亀更新してしまう作者なので度々教えてくれると助かります……！ (9月28日 23時) (
レス) id: eeb0faecb7 (このIDを非表示/違反報告)
星詠み(プロフ) - 続きいつでも待ってます‼︎ (9月28日 22時) (レス) @page17 id: 674129e800 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：好好爺 | 作成日時：2023年9月19日 14時
