【大幅修正入ります】最強鉄拳をお望みですか？【ONEPIECE】 (ページ3)

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「なんだよ半日って！！！」と店内に人がいないのをいいことに心の底から叫ぶ青年に、女は冷静にVサインを掲げながら「他にやっぱり気になる人がいるってフラれた」と平坦につぶやく。その瞳には何も映っていない。闇だ、闇。

お察しください。この女、あまりにも恋人運がないのだ。
新世界のそれなりに発展した海沿いのとある街に門を構えるこの店は、昼時の数時間と夜には、食事処とバーへと形を変える。こじんまりとしているが雰囲気のいい食事処には、老年の夫婦や旅人の青年、若いカップル、またはそこそこ名のある海賊や海軍がやってくる。武器を求める人間以外にも、様々な立場の人がここで食事を摂り女店主と言葉を交わすのだ。
その中で、少なからず女に魅力を感じる男や女もいたりする。色っぽい間接照明の下でてきぱきと調理をしながら顔のいい女が男口調を仕舞って品性のある言葉使いで客と会話を穏やかに交わす様子に、怪訝な顔をする人間は存在しないだろう。少なくとも、女の内情を知らない者には。

女は一日に何十ともなる初対面の人間と顔を合わせ言葉を交わし、またそんな生活を何年も送ってきていたので、人間の習性とやらは身に沁みて分かりきっていた。コミュ力カンストの顔のいい女の運命となれば一つだけだろう。それは女と青年の言葉の迎撃戦の哀れな運命に回帰する。

つまるところ、恋人ができてもすぐ別れるのだ。最短2時間。最長3ヶ月。もはや呪いである。泣きながら娼館に駆け込んだ夜くらい目を瞑ってほしい。

「…そういえば、お前自分から交際を持ちかけたことないっつってたな」

「…ああ、そうだな」

「本当に、オメーはあれだな。”去る者追わず、来る者拒まず”ってヤツだ」

「…まるで私が非情な人間のように言うじゃねぇか。ひどぉい」

ポリポリと小皿に乗ったピーナッツを齧りながら女はよよよと泣き真似をする。いつの間にか二人の人間の間には2つの小皿があり、青年が聞くところによると、「お前、ピーナッツ好きって言ってたろ。新しく仕入れたからな、やるよ」とのこと。
青年は目を覆って空を仰いだ。なんていいムーブだこんちくしょう。結局のところ、この女癖と男癖の悪ささえなければ青年も大衆然りであったのだ。