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向井side
聞いたら傷つく。絶対傷つくだけやって。
そうわかっているのに、知りたい。
向井「どうして、ふっかさんなん？」
「…ふっかは、
私を切り離さないから」
俺がおそるおそる尋ねると、Aはぽつぽつと話始めた。
「…高校生の時、ナオが生まれてから、5時に起きて、お弁当作って、学校が終わったらすぐナオのお迎え。帰ったら家事して、ナオが寝てから宿題してた。でも幸せだった。
私はナオと生きる道を選んだだけ。だけどみんな、大変だねって、離れてく。
仕方ないけど、辛かった」
Aの言葉が、俺の鼓膜を揺らす。
表情が見えない分、俺は一人頑張り続ける制服姿のAを想像していた。
好意で心配されたり、可哀想と言われたり、ねぎらわれたりしてるとわかっていても、
わかっているから笑顔でありがとうと返してきたのだろうけど、
そのたびに切なかったんやろなって思う。
「みんなが心配すると、ずるいって言う人も出てくる。ナオがいるから特別扱い受けてるって言う人がいる。養護されるとさらにヒートアップする。
ふっかだけは、その悪循環の中にいない人だったから」
ふっかは、本当に優しいから、自分がしたいことしかしないでくれるの。
でも、だからこそ私の唯一の支えだった＿＿＿＿＿＿。
そんなことを、過去形でつぶやくA。
それはきっと、離れた今支えに気付いたんだっていうことを表してる。
「恋に気付くきっかけになりませんように。」
俺は何も言えず、ただただそう願って月明かりに照らされた道を歩き続けた。
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作者名：紫乃 | 作成日時：2022年11月7日 1時
