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車に乗せると
いきなり黙り込む。
この前は近くのホテルに
泊まったけど今日は家に連れて帰る。
遠い目で東京の夜の街並みをみつめてる
しばらくドライブでもするか。
車内は洋楽が流れて
会話は何もない。
1時間くらい適当に都内を走っただろうか。
気づけば助手席で寝てる彼女。
家に着いて彼女を下ろそうと足元と首元に
手を差し入れると彼女が起きた。
『じゅりくん?』
「あ、おきた?歩ける?」
『なんで』
「とりあえずここまずいから部屋入ろう」
おぼつかない足取りで車を降りて
マンションにはいってエレベーターに
乗り込めば『ごめんなさい』って一言
『あの…私が呼びました?』
「いや、たくやさんに」
『そうですか…』
「こっち来てたなら言えよ」
『仕事だったでしょ?』
「そんな24時間仕事してるわけじゃねーわ」
エレベーターから降りて
玄関のドアを開けてAを中に入れた。
なんだかんだ家に女入れるのはじめてかも。
ホテルばっかだったし。
「その辺座れば?」
ソファーに座った彼女を確認して
ワインとつまみをとる。
絶対これだけじゃ足りないから宅配を頼んだ。
「飲みたんねーだろ」
『今飲んだらすぐ寝ちゃう』
「いいよ別にその辺に転がしとくから。明日休みだろ」
カランとグラスを静かに合わせると
静かな部屋に音が鳴り響く。
何も言わずに酒を口に運ぶAを横目に
ただぼーっと考え事をしていた。
『じゅりくん』
「あー?」
ただ腕を絡めて俺の手のひらを
彼女が両手でそっと包んで
一本一本確かめるように指をなぞった。
何の意味があるのかはわからないけど
ただ、ただそれだけをひたすら繰り返していた。
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作者名:唯音 | 作成日時:2023年2月24日 22時