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明星咲きて ページ2

宵の明星が輝くにはその名の通り夕方に煌めく金星のことだ。
その様は観ていると心に花が咲くようで好きだった。
その灯はほのかに人を照らす、夜は直ぐ其処だと言わんばかりに。
*
夢だろうか、誰か他人と買い物、ましてや自分に関する買い物をするなど、本当に夢ではないだろうか?
しかしそれは夢ではない、隣にいる彼女がそれを夢でも嘘でもないと証明している。
「葵、あんな服はどうだい?私的にはもう少し背中側が見えても良い気がするのだけど、葵?」
「ぁ、す、すみません…ちょっとボーッとしていて…」
心配そうな顔で覗き込んでくれる、それだけで良い。
たった一度で良い、私を見てくれるだけで良い。
それだけで幸福を享受できるというのに何処まで彼女は優しいのだろうか。
「だ、大丈夫です。ただ…染井さんと一緒にお買い物ができて嬉しいだけです。」
細やかな物を壊さぬように壊れぬように、それを祈り続ける。
*
葵は無理をしていないだろうか、私に付き合って無理をし続けていないだろうか。
心配である、出会った時から自己よりも他者を優先している空気があった。
「無理をさせるのは嫌いだ…」
独り言を呟く、微かな声で、彼女に聞こえないように。
二度と手の届かぬ場所へ誘われないように。
*
「こ、こ、こんんな服、似合いますかかかかかかか…?」
彼女にオススメされた服を着てみたが私なんかじゃ釣り合わない代物だ。
だけど彼女は誉めそやしてくる。
「うん、良いね。似合ってる。似合わないなんてことはないよ。」
「可愛い、うん、とても可愛い。」
甘く蕩けてしまいそうな言葉で包み込んでくる。
私は、太陽の近くでは、駄目なようだ。

星輝きて→←それは眩しくて



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設定タグ:オリジナル , 百合 , 恋愛   
作品ジャンル:ラブコメ, オリジナル作品
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作者名:宙音@恢貝月 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2023年8月8日 23時

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