それは眩しくて ページ1
眩しかった、とても、とても眩しかった。
その光は私にとっては眩しすぎた。
月が太陽に照らされるが如く眩しかった。
*
私が刺されてから数日経ったある日彼女に呼び止められた。
「葵、デートに行こう。」
それはあまりにも唐突であったがとても嬉しかった。
しかしそれを皿洗いをしている最中にいうのはどうだろうか。
「ひぇぁ!?で、で、ででーとですかぁ!そ、そんな…」
手元が狂い皿をシンクに落としてしまった。
「あぁ、すまないね。皿洗いをしている最中だったか。」
飼い主を心配する子犬の顔を浮かべて心配してくる、とても可愛いが。
「え、え、あ、す、すみません。落としちゃいましたね…」
幸いなことにお皿に傷はなく、再度洗うだけで済みそうだった。
しかし余りにも唐突で脳が未だに混乱している。
「デートかぁ…デートか、私は分からないよ…何をすれば良いのか…」
「何をボソボソ喋ってるのさ、今度の週末行くからね。」
彼女の中では決定事項らしい、それは覆ることはない。
「で、でも染井さんの横で…釣り合う…服ないし…」
最後になればなるほど萎んでいってしまう。
私と彼女は釣り合っていないと、何度でも思う。
隣にいるだけで幸せなのにこれ以上何を望めば良い。
無い物ねだりではやめにした。
幸福を、今はささやかな幸福を掴んでいたい。
「大丈夫!服は明日買いに行こう、あとどんな姿でも葵は可愛いよ。」
「わ、分かりました…」
夢を見ているのだろうか、幸せの夢を。
微睡の中で一番上等な夢を。
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