お母さん？〈司×奏〉 ページ1
ピーンポーン
宵崎、と書かれた表札の前でインターホンを押したのは、その家の住人である宵崎奏の彼氏、天馬司。
だが、その奏はというと、彼氏からの訪問に全く気付かないほど、曲作りにのめり込んでいた。
司は、またか、と、慣れた手つきで合鍵を取りだし、そっと家に入る。
中は薄暗く、1週間は篭っていたんだなと、困ったようにため息をつく司。
ほんの少し光が漏れている部屋に向かい、ドアに手をかける。
バンッ！！！
と効果音がつきそうな程、勢いよくドアを開ける。
奏は、何が起きたんだ、と、小さな口をパクパクさせている。
ドアがあった場所に立っていたのは、怒ったような、呆れたような顔をして、仁王立ちをしている自分の彼氏。
奏は、やってしまった、と言わんばかりの顔をし、頭の中でぐるぐると言い訳を考える。
か「あっ、いや、カップラーメン食べた、から、大丈夫、一昨日は寝た、し…」
つ「しっかり食事は取るようにと言っただろう！それに、しっかり毎日寝るようにともな！まったく、奏は頑張り過ぎなんだぞ？」
必死で考えた言い訳は、逆効果だったようで、より叱られてしまった。
だが、谷間見える彼の優しさに、今までの疲れが和らいでいくような気がした。
同時に、司はお母さんみたいだな、とも感じた奏。
つ「むっ！お母さん…か、そうか、それはもう少し分からせないといけないな、」
その言葉で、声に出してしまっていた事に気が付いた奏。
じわじわと近づいてくる司に、咄嗟に後ずさりしようと思うが、床に散らばった楽譜に足を滑らせ、ベッドに倒れ込んでしまった。
そしてあっという間に、世間で言う床ドンをされてしまった奏は、意味が分からないと混乱しつつ、あまりアイドルや俳優に興味を持たない自分でも分かるほど顔の整った彼氏の顔が、もう目と鼻の先にある事に羞恥を感じていた。
つ「まったく、俺も男なんだぞ？少しは警戒心を持たないといけないということを教えないといけないな」
司が、意味ありげに笑う。
か「きゅ、急に眠くなって、今日は寝ないと、司、、」
その笑みに危機感を感じた奏は、起き上がろうとじたばたと手足を動かす。
だが、その小さな身体ではどうすることも出来ず、あっという間に手首を片手で押さえ付けられた。
と、司は奏の唇に、そっとキスを落とした。
それと同時に、今日も徹夜になることを確信した奏であった。
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作者名：美澄 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kagaminer/
作成日時：2021年11月24日 0時
