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「さっき、聞いてた歌、なんて歌?」
携帯の画面を見せて、知ってる?と聞くと、知らないや、との声。
「ジュンくんはどのアーティストが好き?」
「えっとね、僕はこれとか〜、これ、よく聞く!……さっきの、ソラちゃんの好きな歌、僕も追加していい?」
「いいけど……趣味に合わなかったらごめんね。」
どちらかといえば、女の子の気持ちを代弁したような可愛い歌。なぜジュンくんが聞きたがるのだろう、と浮かんだ問いは、彼の満面の笑みでかき消された。
「やった!また、ソラちゃんの好きなもの、一個知れた。」
ジュンくんが、何を思って、何を言いたいのかが分からなくて、目線を、逸らす。
「ソラちゃんの好きなもの!この歌でしょ、それから勉強!あとは、ラムネと〜」
………なんでそんなに嬉しそうなんだろう。
最寄駅を知らせるアナウンスに気づいて、送ってくれてありがとう、と伝える。電車のドアが空くと、膝の上に乗せていた私の鞄を持って、ジュンくんも降りてしまった。
「ジュンくん、ここから折り返し運転だから、多分乗ってたほうが近いよ、」
「ううん、もうちょっと。」
行こう、と言って歩き出したジュンくんが、空いた手で私の手を握る。男の子らしい骨の感覚や、じんわりと滲む汗が、ジュンくんと、手を繋いでいる、と実感させた。
「……ジュンくん、手。」
「僕とつなぐの、嫌だった?」
あんまりじっと見つめられると、自分勝手に勘違いしてしまいそうで、仲良くなりたいクラスメイト、そんなふうに思ってくれてるだけ、なんて言い聞かせる。
「……嫌じゃないけど、」
「映画見てる時の、ソラちゃんの目。すごくキラキラしてたから、おんなじことしたら僕にも向けてくれるかなーって、」
放課後のシーン覚えてない?なんて笑うジュンくん。
「そのシーンの時、あまりにもソラちゃんが可愛い顔してるもんだから、僕も正面からみたくなって!」
こんなにも、愛おしくて、あどけない罪はないな、なんて考える。
そんな幼気な笑顔、女の子を虜にするには、もう充分だ、と心で呟くと、ジュンくんという大きな問題を、解き明かしてみたい気持ちになった。
ジュンくんにお礼のカトクを送ると、机に乱雑した、付箋ばかりの参考書が目に入る。
鞄をしまおうとして、開けたクローゼットには、あの、ワンピースが。揺れる花柄が、自分を惨めにさせるには充分で、少しだけ、涙が滲んだ。
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グラ(プロフ) - むさん» むさんコメントありがとうございます〜!文才のない中で頑張ってます……お言葉とっても嬉しいです❤︎ドギョムのお話、まだ続きますのでよかったらまた覗いてあげてください❤︎ (2023年2月15日 15時) (レス) id: 10714f47f3 (このIDを非表示/違反報告)
む(プロフ) - 主様の文章、とっても素敵で更新されるたびすぐに読んでしまいます!お忙しいとは思いますが、更新これからも楽しみにしてます💗(석ペンなので今のお話とっても展開楽しみです!) (2023年2月9日 1時) (レス) @page42 id: cb9ba72967 (このIDを非表示/違反報告)
優花(プロフ) - グラさん» おおそうなんですか!楽しみです💞💞他の話も全部面白いですし本当に楽しみにしてます! (2023年2月4日 10時) (レス) id: 622f8d2ae2 (このIDを非表示/違反報告)
グラ(プロフ) - 優花さん» コメントありがとうございます〜〜!!初めてもらったコメント……すごく嬉しいです……🌙ジュンくんのお話、個人的にも気に入っているので、中編集が終わり次第番外編書こうと思ってます!またその時は可愛がってあげてください❤︎ (2023年2月3日 23時) (レス) id: b1b8e6b90b (このIDを非表示/違反報告)
優花(プロフ) - ちょっとしたリクエストのようなものなので軽く流していただいて構いません。次の更新も楽しみにしています! (2023年2月2日 0時) (レス) id: 622f8d2ae2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:グラ | 作成日時:2023年1月28日 12時