風味絶佳 (ページ48)

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その日に言った、来週なんてすぐきちゃうよ、の言葉の通り、私は憂鬱な月曜日の朝を迎えていた。

「ソラちゃんがんばってね〜〜」

廊下でソクミンのネクタイを正してあげると、朝から眩しすぎるほどの笑顔と声で、外務へのお見送りを受けた。今日は帰社時間が分からないから、先に帰ってて、と伝えると、眼に見えるように垂れた耳。その姿が可愛くて、少しだけ元気が出た。

「社長、おはようございます。今日一日、よろしくお願いします。」

「イムさん、おはよう。こちらこそよろしくね。」

朝、コーヒーを片手に涼しげな顔で出社した社長に挨拶をする。
にこ、と笑う社長に、今日のスケジュールの確認をすると、考えていたよりも早く終わりそうな予定に、ソクミンと帰れそうだな、なんて考える。

「イムさん、もし今日の夜空いてるなら、終わり次第、一緒に食事、しない？」

恐る恐る、と言った顔色の社長に、この人もこんな顔をするのか、と驚いて、私は大丈夫です、と伝える。

「良かった！」

断られたらどうしようかと思った、と笑う社長に、断るわけないですよ、と返す。

…‥どうやら私は、社長の笑顔に弱いらしい。

一日一緒に過ごすうちに、気づいたことがたくさんある。まず社長は、車を運転するのが好きだ、と言うこと。当たり前のように運転席に座る彼に、私が、と言うと、俺の好きにさせてよ〜と我儘を強請られた。

「運転、実はそんなに自信がなかったので助かりました、すみません。」

「あはは、そうなの？本当に気にしないで、いつもソアなんて助手席で思いっきり寝てるぞ」

お菓子をこっそり食べる、ソアさんのいたずらっ子のような笑みを思い浮かべて、ふふ、と笑う。

次に、社長は意外と子供っぽい、ということ。威圧感のある真顔からは想像できないほど、いろんな顔で笑ったり拗ねたりする。

…‥今だって私に、本名で呼んでほしい、とごねているし。

最後のクライアントを周りきると、駐車場までの道をゆっくり歩く。
逐一メッセージをくれるソアさんのサポートもあり、はじめての外務は意外と順調に進んだ、と、思っていた。