風味絶佳 (ページ41)

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「ソクミン、これ、変じゃないよね？なんか、ちゃんと、新入社員、って感じになってるよね？うう、」

背の低い私にとって、完全に着せられた状態のスーツ姿を見て、ソクミンは大丈夫！ソラちゃんめっちゃ可愛いよ〜、なんて見当外れの褒め言葉を述べる。

ふと、ソクミンのネクタイが曲がっていることに気づいて指摘すると、朝からミンギュにやってもらったんだけどな、としょんぼり。ネットで調べながら結び直してあげると、ぱぁ、と皺を寄せて笑うものだから、一緒にいるうちに、犬の方に似てきたんじゃない？と揶揄う。

　
入社式の開式アナウンスが鳴ると、きゅ、と心が締まる感覚がする。中小企業ではあるものの、ベンチャーというだけあって、先輩も若めの方が多いみたいだ。
　

……どこかで見たことのある人だ。

登壇して、綺麗な言葉で挨拶を述べる社長さんを見て、なぜか懐かしいような感覚に浸る。ぼんやりとその理由を考えているうちに、挨拶が終わり、起立、の礼に出遅れてしまった。

恥ずかしい。顔が赤くなっていくのを感じて、それ以降の式中は号令のことばかり考えていた。

「いや〜、あれは面白かったわ。ソラちゃん、いつやらかすかな〜って思ってた矢先だったから、俺まじで笑いそうになったんだよ？」

悪気もなく、幼気な笑顔で笑うソクミンに、もう、やめてよ、と言う。

「これはミンギュに報告だな〜」

「やめてよ〜ミンギュに言ったら、またノロノロしてるからだって馬鹿にされるもん。」

「それは絶対に言われるな！」

「……でもさ、本当にソクミンがいてくれて良かった。ソクミンがいなかったら、多分、このお弁当も1人で食べてただろうし、なんなら恥ずかしくて泣いてたかも。」

少しだけ素直に、ソクミンに伝えると、泣かないで赤ちゃん〜なんて、また笑われた。