風味絶佳 (ページ33)

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一体いくらの時間、そうしていたのだろう。
何も言わず、お店まで送ってくれた運転手さんとジフンさんにもう一度お礼を伝えて、お店のカウンターにぽつん、と座るおじいちゃんに声をかける。

「あのね、やっぱり、私の、妹とお母さんがいたの、」

何度も憧れた＂お母さん＂という言葉は、今の私にはとても辛くて、口にするだけで、また、枯れたはずの涙が溢れた。

「ソラ、ごめんな。」

「本当はな、俺、全部知ってたんだ。あの日、ソラに出会った日。本当は拾ったんじゃなくて、捨てられたところに遭遇したんだ。お前の母親が、何を思ってソラを捨てたのか、全部その時に聞いてたんだ。」

おじいちゃんに、なんで黙ってたの、と聞くと、おじいちゃんの手が、私の頭を撫でる。

「ごめんな、全部最後まで言わないつもりだったんだ。ソラには、綺麗な記憶のままで居て欲しかったんだ。」

私を、ずっと守っていてくれたおじいちゃん。すごく苦しいし、すごく辛いけれど、この家で、おじいちゃんが待ってると思ったら、私、大丈夫だよ、と本心を伝える。

血なんて繋がってないけれど、その日に2人で食べた、夜食の参鶏湯は、今までよりもずっと、美味しくて、記憶に残る味だった。