風味絶佳 (ページ8)

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そう言って目をすぼめてウォヌくんと教室に帰っていた彼、クォンスニョンさんは人の懐に入るのがとっても上手みたいだ。
現に今、壁を乗り越えてきた貴方に少し、ほんの少しときめいているみたいだし。

こちらに向けられた表情を思い出して太陽にも負けないような笑顔だったなぁとぼんやり思う。

「なに、スニョンのこと気に入った？」

ニヤケ顔で私を揶揄うジヨンは、私が慌てて首を振ったのを見て少し残念そうな顔で言う。

「ソラが前に言ってた、好きな人のタイプ。明るくて朗らかな人って、スニョンにぴったりなのに。」

「まだ会ったばっかりだしそれはよく分かんないけど……。でも、やっぱり思った通り、ジヨンの周りには素敵な人ばっかりだね。」

「ははっ、そうかな？ありがとう」

私がその笑い方、さっきのウォヌくんにそっくりだといえば、もう！とそっぽ向かれた、口元は緩んでるくせに。

移動教室から帰ってくると、机の上には見慣れたコンパスと知らないコーヒー味のお菓子、それから付箋が置いてあった。

「誰から？あ、スニョンの字だ」

私の席を振り返ったジヨンはこいつ意外とマメだね〜と感心しながら机のお菓子を開けて笑った。

〈俺たちも移動だから机に置いとく、コンパスありがとう！マジで助かったー！お菓子嫌いじゃなかったら貰って〉

綺麗ではないけれど、男の子らしい筆圧の濃い字で書かれた付箋を読み終わり、ちょっと、それ私がもらったお菓子じゃん、とジヨンに言うと、いーのいーの！と謎の解答をして食べはじめてしまった。

「てかこれなんて書いてるの？日本語？」

なにが？と思い指差された付箋の裏に目を向けると、
〈有難う〉と日本語で書かれてあった。
字体的にクォンくんが書いたんだろうけど、なんで漢字で書いたんだろう、画数の多い字だから半分絵みたいになってる、と思い笑みがこぼれる。

日本語わざわざ調べてくれたのかな、優しさに溢れた素敵な人だとさっきの笑顔を思い出していると、

「聞いてる？これなんて書いてるのって！」

なんだか誰かに教えるのがいじらしく感じて、秘密、そう答えると、ジヨンはなにそれと笑ってまたお菓子を食べはじめた。これ私の分まだ残ってるのかな？

ウォヌくんとクォンくん、新しい知り合い、いや友達と言ってもいいのかな。うん、友達が出来た、今日はいつもよりずっといい日。
思い出すと胸がなんだかいっぱいになって、久しぶりにぐっすり寝れそうだ。