月が、綺麗ですね (ページ1)

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顔　紅林弘太郎ページ1

「紅林！タイムリーヒット！！！！」

『あ、打った』

こーくんが買ってきてくれた野球盤に手を伸ばす

本当はゲーム用らしいが野球が理解できるよう

私の為に買ってきてくれた

『タイムリーヒットだから…』

野球版には点字が付いているのでわかりやすい

私は生まれつき目が見えない

うっすらと光は理解できるが、そこまでだ

だからテレビに映る様子はよく分からない

もう慣れきっている為特に何にも思わない

白杖があれば道は歩ける、点字があれば字も読める

なので別に不便を感じた事はなかった

『みんなの反応はどうだろ』

なぜかエゴサしてしまう

音声で読み上げてくれる為内容は分かる

やっぱイケメン

紅林サイコー

『…イケメン…なのか…』

どうやら私の彼氏はイケメンらしい

背も高いし優しいし、体格いいし、でも顔は分からん

見えないのでどうしようもない

触ればある程度認識できるけど嫌がられそうだし

ちなみに自分の顔は可もなく不可もなくだった

なので一回別れようと言ったことがある

目が見えないから他の選手の彼女みたくサポート出来ない

しかも容姿は平凡、彼女として終わってる

もっとお似合いの人がいるんじゃないかと思った

紅林「あ"？何言ってんの」

そしたら見たこともないくらいにキレられた

以降、私はネガティブなことを言わないようにした

怖すぎる、あれは2度と経験したくない

『…どんな顔なんだろ』

紅林「誰の顔？」

『うわぁぁ！びっくりした』

紅林「いや、俺ただいまって言ったけど」

『ごめん聞こえなかった』

紅林「俺の顔どうかしたの」

バレてる…

『いや、みんなイケメンって言ってたから』

紅林「俺の顔見たくなったの？」

コクコクと首を縦に振ってみる

するとニコニコしながら良いよ触ってと言われた

『いやいや、嫌でしょ』

紅林「Aのだったら大丈夫」

『じゃ、失礼します』

いや、顔ちっさ

すると私の手にそっと手が重なる

私の大好きなアスリートの手である

ﾁﾕｯ

『何してんの！？』

紅林「思ってた以上に可愛かった」

『ねえ！？』

紅林「大丈夫、なんかあったら俺が守ってあげるから」

『あ、ありがとう』