鎖と肌が擦れる音 (ページ1)

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母「大学卒業おめでとう。…卒業祝いに、これ。」

お母さんから渡された、四角い箱。

パッケージにはPCのプリントがしてある。

「わぁ！…ありがとう、お母さん！大事にするね！」

私はずっと前からPCが欲しかった。

だから、卒業したら買ってもらう約束をしていた。

「でも…PCの操作分からない…」

母「あら、お友達にこう言うの得意な子居るって言ってなかったかしら？」

「あっ！そうだ、居た！」

母「会って教えて貰ったら？」

「うん！そうする！」

私はその人の家に行く用意をし、PCの箱の取っ手を持って家を出た。

「それにしても、会うの久しぶりだなぁ…」

大学は同じだったけれど、あんまり会わなかったしなぁ。

「あ、今居るかLINEしないと。」

『焦凍』

そう表示されて居る所をタップした。

焦凍おはよ。

一ヶ月前に来た朝の挨拶の履歴を横目にメッセージを送る。

Aねぇねぇ!今から会える?

少しして、返事が返って来た。

焦凍良いが、どうかしたか?

Aお母さんからPC貰ったんだ!だから、教えて貰おうと思って。

焦凍良いぞ。

Aやった!今から行くね!

「久しぶりに焦凍に会える…楽しみだなぁ。」

スマホを薄桃色の鞄に仕舞うと、また歩き出した。

「って、今日の服…気合い入れ過ぎた？？」

今日の服装は、フリルの付いた白のワンピース。

まるで、デートに行くリア充の様だ。←

「テンション上がり過ぎでしょ…」

自分でも呆れる。

「ふぅ。」

私は空に生温かい息を吐いた。

「急ごう。」

足の速度を速め、焦凍の家へ向かった。

『ヒュウッ』

いきなり、前方から北風が吹き込んで来た。

「寒ッ？！…何だろ…急に。」

まるで私に、この先には行くな。危険だ。進むな。

そんな事を語り掛ける様に風が吹き荒れる。

歩道を歩く人々は、寒いと言う様に防寒具に身を包む。

「寒い…けど、約束したし行こう。」

冷たい北風が吹き荒れる中、重たいPCを大事に抱え、ふらつきながら、歩を進めた。