やすだ短編

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「ただいまー」
帰ってからすぐソファーに横になる。
お母さんとお父さんはやっぱり仕事で、
すばるくんはまだ帰ってきてない。

もし今帰ってきたら、何話せばいいか分からないけど、このまま気まずくなりたくもないし……

ウトウトしてたらいつの間にか寝てて、
近くの携帯を見たら1時間経ってた。
がた、と音がしてそっちを見るとすばるくんが椅子に座って携帯を見ていた。


「あ、すばるくんおかえりー」
「…ただいま。今日なんもなかった？」

あ、昨日のこと。心配してくれてたのかな、って嬉しくなった。

「全然、大丈夫やったで〜大倉にも言ったら、これから委員会ある時も大倉が終わるまで待ってることにする」

平気なフリして答えるけど、目も合わせられないし。

「…………大倉」
「え？」
すばるくんの声が一瞬すごく低く聞こえて、聞き返して顔を上げると、いつの間にか近くにいたすばるくんの顔。ものすごく近くて、顔が赤くなる。
やばい、こんなんじゃ、ばれる。

また。顔が近づく。すばるくんと目が合ったまま。
何にも考えられなくて、でも確かにキスされる。
それだけわかった。
唇が触れる直前思わず目をつぶる。
あと1センチ。その時。



プルルル……
と俺の携帯がなった。
なんで今やねん……！！！
画面には、大倉、の文字。
それを見てすばるくんは電話出てきな、といつも通り優しい声で言ってそっと俺から離れて部屋へ戻った。
リビングを出ていくところまでを見守って、
出て言った瞬間、はぁと崩れ落ちた。

またキスできるところだったのに、とかなんでキスするつもりだったんだろう、とか頭がグルグル回る。

仕方なく切れた大倉の電話を掛け直すと、
「あ、もしもし章大〜〜この前のノート借りっぱなしやったわ〜返したいねんけど、家まで届けていい？」
と、それはそれは呑気な声ではなしていた。


「……ええよ〜」
ただ、タイミング！！！

せっかく2人っきりやったのにな〜なんて思いながら大倉が来るのを待った。

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