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[滝岡 奏也]
「228番!部屋の外に出ろ!」
初めは耳を疑った。
死刑判決が下っている俺に直接会える奴なんて、警察かその関係者ぐらいのはずだ。
なのに『外に出ろ』?
もしかして、と淡い期待が頭をよぎるが、都合のいい妄想はすぐに振り払う。
探偵社と、まさか特士が絡んでいるとは思わなかった。
流石にあの子も苦戦するだろうし、俺の元に来る余裕なんてないだろう。
俺はただ、あの子に日常を取り戻してほしいだけなんだけど。
そんなことを考えているうちに扉の前に着いた。
看守が開けた扉をくぐるとそこには、
江「久しぶりだね、タピオカくん」
偉そうに足を組んで笑う、糸目の探偵がいた。
黒縁の眼鏡をくいっと押し上げる。
タ「、、、探偵社が何の用?」
1番最初に浮かんだ疑問をそのまま口に出すと、探偵はその細い目を少しだけ開いて言った。
江「なに、君の相棒について話してほしいのさ。
何て言ったっけ、ああ、そうだ、『稲荷姫』
探偵があの子の二つ名を口にすると同時に俺は自分の椅子を蹴り倒した。
看守が何か怒鳴っているが、何も頭に入ってこない。
タ「お前があの子の何を知ってる!!」
江「色々知ってるよ」
探偵は更に口角を釣り上げる。
江「自分が描いた絵の中に人を引き摺り込む能力を持つ。
変わった見た目をしているが、それは彼女が完全な人間ではないから。
言ってしまえば、異能力生命体に近い存在。
自我を持ち暴走した異能『洛陽』を封じ込める器に過ぎない。
探偵社と条野A、そして『スイレン』のマスターに因縁がある」
ここまで一息で言ってのけた探偵につい顔を顰める。
なんだ、こいつは。
江「じゃあ逆に訊くけどね、普段は『稲荷姫』の人格が思考や行動の全てを握っているけど、」
探偵はそこで言葉を区切り、俺の目をじっと覗き込む。
江「絵の世界の中にいる時だけ、本人の人格が出てくるって知ってた?」
思わず息を呑む。
嘘かもしれない。
俺を騙そうとしているだけかもしれない。
でも、もしそれが本当なら。
タ「あの子は、瑛藍は悪くないんだ。
悪いのは画家の奴で、俺はあの子に日常を取り戻してほしいだけで」
探偵は懐中時計をちらと見る。
江「時間もなくなってきたし、それじゃあ答え合わせと行こうか」
ニヒルな笑みではなく、穏やかで頼もしい笑顔で言った。
江「瑛藍とマスターとの因縁について。
それに、瑛藍が行きそうなとこについてもね。
あの子の為に、協力してくれるね?」
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水街 - これにて終演、また来世!楽しみに待ってくださっている方がもしいたのなら、最後まで書けなくて申し訳ございません。多忙ゆえ体力が限界です。 (1月20日 21時) (レス) id: 2750b03dd8 (このIDを非表示/違反報告)
くらげ - 続けていただけて嬉しいです...!無理はせず、自分をお大事にしてくださいね。更新、楽しみにしております。 (7月20日 21時) (レス) @page16 id: fa8f980323 (このIDを非表示/違反報告)
葉桜 桜 - 面白いです!早く続きが見たいです!楽しみに待ってます! (2023年3月27日 14時) (レス) @page15 id: 61dac77b6e (このIDを非表示/違反報告)
千月(プロフ) - 面白すぎるんだが?続き待ってます! (2022年4月23日 10時) (レス) @page14 id: c920434a9e (このIDを非表示/違反報告)
水街(プロフ) - 夢女子S氏さん» えっっっっっありがとうございます!!!!!!推し一緒てことは趣味が似てるんですかね、、嬉しいですありがとうございます頑張ります!!!!泣 (2021年8月9日 20時) (レス) id: 17a12418a3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水街 | 作成日時:2021年4月17日 22時