猟犬の妹は命を救う仕事をしている。 参 【文スト】

マスター ページ1

寒い。

寒い、寒い、寒い。

それに、とても乾燥している。

私は、この乾いた冷たい空気を、知っている。

絵とは思えないほど、精巧に再現されている。

ふと、遠くで空気が揺れるのを感じた。

そちらを振り向くと、見慣れたあの子が立っていた。

何度夢に見たとこか。

何度夢の中で謝ったことか。

ようやく会えた。

本当に申し訳ないことをした。

私は謝りたくて、彼女の元へ走り寄った。

彼女は、悲しそうな、怒っているような、蔑んでいるような、複雑な表情だった。

その顔に、人間の部分もちゃんと残っているんだな、と少しほっとする。

彼女は口を開いた。

「この髪、染めてもダメだったんだよ。
目も、カラコン入れてもこの色に染まっちゃうの。
黒髪碧眼に戻りたい。
友達も両親も返してほしい」

絶望しきって無感情になった声だった。

「私の日常を、返して」

「、、、すまない」

私は、ただ謝ることしか出来なかった。

彼女は短く溜息を吐いて、瞬く間に消えてしまった。

ああ、寒い。

寒い。

寒い、寒い、寒い、、、

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