猟犬の妹は命を救う仕事をしている。 弐 【文スト】

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李「この遊郭の世界には、今言った3人の他に『スイレン』のマスターもいるはずなんだけど」

終始、とても不思議そうな表情の瑛藍。

それもそのはず。

1番最初にこの世界に閉じ込められたはずのマスターが、遊郭にはいないのだから。

もし遊郭のどこかにいるのなら、駆け引きが好きな三鷹花魁が何も言わないのはおかしい。

太「、、、本当だね。
マスターは、この絵の中のどこにいるんだろう？」

深く考えようとしない瑛藍に対し、お得意の頭脳戦に持ち込みたい太宰。

瑛藍が油断した隙に太宰が触れ、異能を解除したいらしい。

その為には、自由気ままな瑛藍のペースに飲まれてはいけない。

太「建物の周りの森の中を迷ってる可能性が1番高いね。
そうなると、、、」

もう片方の世界には乱歩さん、鏡花ちゃん、谷崎くんがいるから大丈夫。

マスターを広大な森から探し出すには人手が足りない。

瑛藍の目的が掴めないままだから、解決は早い方が良い。

太宰は絶え間なく思考する。

そして導き出した答えは、

採「貴方以外は全員、マスターの捜索にあたる？」

太「っそ、その通りだよ」

思考を先読みされて狼狽える太宰。

ほんの一瞬の熟考。

条野にだって、この程度のことは出来ないはずがない。

長期の頭脳戦に持ち込まれれば太宰には負けるが、発想自体は負けず劣らずだ。

太「Aちゃん、社長、与謝野さんも、そろそろマスターがいないことに気付き、森へ探しに行くだろう。
そうなったら、人手は多い方が良い」

だが太宰は、『人間失格』により、瑛藍の世界に入ることが出来ない。

既に実証済みだ。

これが、元ポートマフィア最強の男と『猟犬』尋問の達人とが導き出した、論理的最適解。

あとは実行に移すだけだ。

国「リスクは大きいが、太宰が言うならきっとそうなのだろう」

天才的な頭脳を持つ太宰の判断を信用する探偵社の面々。

採「さぁ、私たちをAと同じ異能空間へ」

5人を代表して条野が言うと、瑛藍は鈴を転がしたように笑った。

とても楽しそうに、無邪気に。

李「絵の中に入りたいってジコシンコクされたのは初めてだよ！！！」

そして、満面の笑みのままメモ帳を開く。

李「良いよ、そんなに言うなら行っておいで」

それと同時に、異能使用時の金色の文字列が広がる。

李「あは、あははは！
今日は人生で最高の日だなぁ！」

条野、敦、国木田、賢治の4人は、太宰を残して絵の中に消えて行った。

太「さて、瑛藍。
少しお話ししようか」

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