４５＜兄の幸せは弟の幸せ＞ ページ46
〜とある家の次男が語る〜
9月13日-14:33-
「おそ松兄さん…ほんっと気持ち悪いんだけど。」
「えへ、えへへ、えへ。」
「うわきっも…。」
おそ松が風邪をひいた。
一昨日信じて送り出し、昨日帰ってきたと思ったら、酔っ払いの様な、随分と夢見心地な感じで、えへへ、とへらへら笑うのだ。何かの病気じゃないか、と言って熱を測れば、本当に風邪だった。
ふいに、玄関を叩く音がした。弟たちと一緒に下まで行けば、声が出ないほど驚愕した。
「こんにちは。」
礼儀正しくお辞儀をし、いかにも、よくできた
「三ノ橋です。…カラ松さん。」
「はい！？」
不意に名前を呼ばれ、お世辞にもクールとは言えない声が出た。
「少し、お話しをしたいのですが。」
ーーー
「申し訳ございませんでした。」
二人きりの居間、女子高生(自分の元ストーカー)の土下座。何だこれ。
「や、やめれくれ、レディ！」
「私は、数えきれない過ちを犯しました。」
静かな声だった。
「でも、もうしません。」
あの日、随分と遅い時間だったものだから、顔も見えなく覚えていなくて、それでオレは、彼女を深く傷つけてしまった。
でも今、ひとつ、思い出した。
あの日見た、生きる糧を見つけた、といったあの顔。
「もう、大丈夫ですから。」
あれと今、重なった。
ただ、瞳に映る色が変わっていた。
青から赤へ。
「…そうか。」
オレは微笑んで返した。
「おそ松は、2階にいるぞ。」
ーーー
ガールが2階に行くと同時に、弟達が居間に入ってきた。
「やるじゃん。」
入ってくるなり、トド松が肘でつついてきた。弟達は皆、悪態をつきながらも、おそ松の帰還を喜んでいた。さっき、気持ち悪い、と言っていたこのトド松だってそうだ。
「そういえばさあ。」
不意に隣のチョロ松が十四松に話しかけた。
「十四松は、三ノ橋のこと、なんで言わなかったの？」
「あぁ…そういえば。」
一松もぼそりと同意する。
オレは何も言わなかったが、同じ気持ちだった。
引っかかりというか、そこだけが謎のままだったからだ。
「うーんとね…おれが、あの子と出会って、幸せだったから？」
あの子、とは、いつかの彼女のことだろう。
それでも何だか漠然としていて、理解できないオレ達。
「何だか、解る気がする。」
不意にトド松が言った。
「だって、おそ松兄さん、今、すっごく幸せそうだもんね。」
トド松の笑顔に、皆も笑顔で頷いた。
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錠前(プロフ) - ライムさん» ライムさん、コメントありがとうございます！楽しんでいただけたようで何よりです。これからも頑張っていきますので、何卒、よろしくお願いします。 (2019年6月30日 12時) (
レス) id: 09029ad6bb (このIDを非表示/違反報告)
ライム(プロフ) - 作品、めっちゃ素晴らしいかったです！！！これからも応援しています！ (2019年6月17日 6時) (レス) id: 928e00f70d (このIDを非表示/違反報告)
錠前(プロフ) - killlifeさん» killlifeさん、コメントありがとうございます！甘いだけじゃない恋、ある種の苦味のある甘酸っぱさ、そういうモノがこの作品のテーマのひとつだったので、伝わったようでとても嬉しいです。これからも頑張っていきますので、何卒、よろしくお願いします。 (2019年5月30日 19時) (レス) id: 09029ad6bb (このIDを非表示/違反報告)
killlife - とても良い作品でした。甘酸っぱくて何だか学生時代の頃を思い出しました。コメント頂けると嬉しいです。 (2019年5月27日 0時) (レス) id: a010fddd46 (このIDを非表示/違反報告)
錠前(プロフ) - はむめろんさん» はむめろんさん、コメントありがとうございます！心が動かされた、というお言葉、本当に嬉しいです。この作品を通して、貴方に『何か』が伝わったなら、それだけで私は満足です。新作も頑張っていきますので、何卒、よろしくお願いします。 (2018年8月18日 10時) (レス) id: 09029ad6bb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：錠前 | 作成日時：2016年10月22日 16時
