４３＜恋だ！！！＞ ページ44
〜とある家の長男が語る〜
9月11日-12:41-
Aが言った、ある言葉が、俺の頭の中で反響していた。
『また、独りだ。そう思ったら、もうどうにでもなれと思って、池に。』
「くそっ…！」
足が酷く痛む。脇腹が内側から締め付けられる。
喉から血の味がする気がする。
それでも走った。俺の人生を賭けて走った。
そして俺は、大きな池のある公園の入口までたどり着いた。
平日の昼間ってこともあり、がらんとしている。
老人を一人二人見かけたぐらいだった。
その公園の中を駆け抜けながら、俺は、昨日の夜に考えていた事を、思い出した。
『あの時出会わなければよかった。』
その出会った場所が此処である。
木の上で、初夏の日、俺たちは出会った。
本当にそう思ってるか？出会わなければよかったって？
そんな訳無いだろうが！！！！！
最悪な出会いだった！
だが俺は、Aと出会えた事が、本当は、本当は！
走っていたら、橋のところで、慌てふためく老夫婦を見かけた。何かを察して、俺は老夫婦に駆け寄った。
「何があった！？」
「さっき、お、女の子が…池に！」
橋の手すりにがばりと覆い被さる感じで、向こうの池を見る。それはほぼ反射的な動きだった。
その湖で一点の青。それだけでもう分かった。
俺がずっと、追いかけていた人だ。
「A！！！」
橋からは然程遠く無い位置にいる。落ちたのは本当に『さっき』なのだろう。
「救急車を！」
老爺が急いで携帯電話を取り出した。
そして、俺は橋を駆け抜け、柵を飛び越え、そして、淀んだ其処に飛び込んだ。
如何なるかなんて知らない。
飛び込んで、それで俺が死んだって構わない。
頭より先に、体が俺の正直なものを表した。
「がはっ！」
池の水は淀んでいて、無闇に口を開けると入ってきて、これが何とも言えない。しかも、水に入るとどうも辺りがよく見えない。
服も多少重いが、視界だのなんだの、もうどうでもいい、どうだっていい。
そう、俺はどうなったっていい。
だから、どうか、Aを＿＿＿。
「A！」
急いで陸に引き上げたその体は、いやに軽くて冷たかった。
ぐったりとしたその体を見つめ、一瞬、もう死んでいるのかと絶望した＿＿その瞬間。
「おそ…どし…て。」
咳き込みながら言うAを見て、胸が張り裂けそうな程痛んで、涙が出てきてしまった。
「A……。」
この滲み出てくる痛みの名前を、今やっと知った。
笑顔を見たらズキズキして。
誰かに知らない顔を向けていたらイライラして。
側にいないと無気力になっちゃって。
この痛みの名前は＿＿＿
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錠前(プロフ) - ライムさん» ライムさん、コメントありがとうございます！楽しんでいただけたようで何よりです。これからも頑張っていきますので、何卒、よろしくお願いします。 (2019年6月30日 12時) (
レス) id: 09029ad6bb (このIDを非表示/違反報告)
ライム(プロフ) - 作品、めっちゃ素晴らしいかったです！！！これからも応援しています！ (2019年6月17日 6時) (レス) id: 928e00f70d (このIDを非表示/違反報告)
錠前(プロフ) - killlifeさん» killlifeさん、コメントありがとうございます！甘いだけじゃない恋、ある種の苦味のある甘酸っぱさ、そういうモノがこの作品のテーマのひとつだったので、伝わったようでとても嬉しいです。これからも頑張っていきますので、何卒、よろしくお願いします。 (2019年5月30日 19時) (レス) id: 09029ad6bb (このIDを非表示/違反報告)
killlife - とても良い作品でした。甘酸っぱくて何だか学生時代の頃を思い出しました。コメント頂けると嬉しいです。 (2019年5月27日 0時) (レス) id: a010fddd46 (このIDを非表示/違反報告)
錠前(プロフ) - はむめろんさん» はむめろんさん、コメントありがとうございます！心が動かされた、というお言葉、本当に嬉しいです。この作品を通して、貴方に『何か』が伝わったなら、それだけで私は満足です。新作も頑張っていきますので、何卒、よろしくお願いします。 (2018年8月18日 10時) (レス) id: 09029ad6bb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：錠前 | 作成日時：2016年10月22日 16時
