１９＜末弟の本気＞ ページ20
〜とある家の末弟が語る〜
6月29日-8:30-
茶碗に盛られた美味しそうなご飯に、焼き魚と味噌汁。なんら可笑しくはない松野家の朝ご飯だが。
可笑しいのはそこじゃない。
「お、おそ松兄さん。」
十四松兄さんはいつものようにご飯を一気にかっこんだりせず、うろたえた調子でおそ松兄さんに話しかけた。
「ん…？何、十四松。」
おそ松兄さんはボク達がご飯を食べてるちゃぶ台から少し離れたところで漫画を読んでいた。
のったりとした感じのおそ松兄さんは十四松兄さんの方を向いたけど、その目は虚だった。
「あ、えっと、ご飯、食べなくて大丈夫なの？」
何か話しかけたかったけど何を話せばいいかわからなかったらしい。今考えましたって感じの、話の内容だった。
「朝飯ならもう食った。」
「そ、そう。」
「「……。」」
おそ松兄さんを除いた兄弟全員がふぅ、と溜息をつき目を合わせる。
そこでカッコつけるのも忘れて、その眉を心配そうに八の字に曲げたカラ松兄さんが見えた。
「……はぁ。」
ボクは溜息をついた後、ほかほかのご飯を見ながら少し考えた。
おそ松兄さんの様子が可笑しいことは、心当たりがあった。
三ノ橋A。カラ松兄さんのストーカー…らしい。
いやまぁカラ松兄さんにストーカーなんている訳ないし、幻想でしょ、と思っていたのだが、実際兄さんの話に出てきた青フードの子は窓の外に見えた。…あの子がAちゃん、か。
あの後おそ松兄さんがいなくなって、入れ替わりにカラ松兄さんが入ってきた。
最高に気まずかったのを覚えている。勿論本人にAちゃんの事は面倒臭いし関わりたくもないから言わなかったけど。
おそ松兄さんは夕方ごろ帰ってきた。
何かあったのかと聞いても上の空だった。
みんなもギャンブルで有り金果たして絶望感に苛まれてるんだろうと気にしないで夕食をとった。ボクもその時はそこまで心配していなかったし、母さん特製の絶品コロッケをおそ松兄さんの分まで食べた。
でも、今回は別だ。
おそ松兄さんが早起きするなんて、天と地がひっくり返ってから、全世界に大雨やら地震やらの警報が鳴り響き、更に槍がドスドス降るような。いや、それ以上かもしれない。
ボクはご飯を、十四松兄さんのように一気にかっこんで、おそ松兄さんの肩を掴んだ。
「いくよ！おそ松兄さんっ！」
「は！？」
驚いてるおそ松兄さんを自室まで引っ張っていった。
他のみんなの間抜け面が、妙に可笑しかったのを覚えている。
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錠前(プロフ) - ライムさん» ライムさん、コメントありがとうございます！楽しんでいただけたようで何よりです。これからも頑張っていきますので、何卒、よろしくお願いします。 (2019年6月30日 12時) (
レス) id: 09029ad6bb (このIDを非表示/違反報告)
ライム(プロフ) - 作品、めっちゃ素晴らしいかったです！！！これからも応援しています！ (2019年6月17日 6時) (レス) id: 928e00f70d (このIDを非表示/違反報告)
錠前(プロフ) - killlifeさん» killlifeさん、コメントありがとうございます！甘いだけじゃない恋、ある種の苦味のある甘酸っぱさ、そういうモノがこの作品のテーマのひとつだったので、伝わったようでとても嬉しいです。これからも頑張っていきますので、何卒、よろしくお願いします。 (2019年5月30日 19時) (レス) id: 09029ad6bb (このIDを非表示/違反報告)
killlife - とても良い作品でした。甘酸っぱくて何だか学生時代の頃を思い出しました。コメント頂けると嬉しいです。 (2019年5月27日 0時) (レス) id: a010fddd46 (このIDを非表示/違反報告)
錠前(プロフ) - はむめろんさん» はむめろんさん、コメントありがとうございます！心が動かされた、というお言葉、本当に嬉しいです。この作品を通して、貴方に『何か』が伝わったなら、それだけで私は満足です。新作も頑張っていきますので、何卒、よろしくお願いします。 (2018年8月18日 10時) (レス) id: 09029ad6bb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：錠前 | 作成日時：2016年10月22日 16時
