１１＜犯行の動機は＞ ページ12
〜とある家の長男が語る〜
ドン！という音が路地裏に響いた。
パラパラと落ちているのは、
彼女が俺の足の間の壁を蹴ったことにより、
壁が損傷したためであるのだが。
この子の力どうなってん。
この状況はあれか。
最近流行り(？)の『足ドン』と呼ばれるやつか。
何故、俺がそれを『されてる』側なのかはこの際おいておこう。
彼女は般若のような顔で俺を睨む。
否、ようなじゃない。般若だ、こりゃ。
「いや、だってせっかく退院したし？
ちょっと顔でも見に行こうか、ってね？？」
それを聞いた彼女は、
さっきまでの般若のような顔を緩め、
パッと何かを思い出したかのように俺に言った。
「退院おめでとうございます。」
Aは仕方なさそうに言うが、
どうやら照れているようだ。
リアルJKの突然のデレに、一瞬戸惑うも、
いつもの調子で喋り続ける。
「...そっれにしてもアジコーだってね...。
なっかなかに頭良いとこじゃないの。」
私立紫陽花女子高等学校。
校則も厳しく、その学校名通り、
紫陽花の花言葉のように、
『元気な女性』
というような生徒たちを目指す、
此処らへんじゃあ有名な女子校。
紫陽花には、『移り気』『冷淡』等の花言葉もあるはずなのだが、それはどうなのだろうか、と兄弟で学生の頃話した記憶がある。
「.......。」
生徒手帳を見られた事を思い出したのか、
Aはまた機嫌を損ねてしまったようで、先に歩き出してしまった。
「ね、頭良いの？」
慌ててついていくも、
彼女は俺を見ずに前を見たまま歩き出す。
…これは紫陽花の花言葉ピッタリかも。
ぽたん、また自分の顔に大きめな雨粒が落ちた。
「！」
雨がかなり強くなってきてしまったようだ。
「マジかよ...。」
俺がそう呟き前を向くと、Aはもう先を歩いていた。
もう構うのもやめて、俺も帰ろうかと思ったその時、ヒュンと何かが飛んできた。
「！」
慌ててその手でキャッチする。
飛んできた方を向くと、
Aがずっと先で俺を見つめていた。
「それ、さして帰って下さい。風邪ひいてカラ松さんに感染したりなんかしたら、許しませんから。」
咄嗟に掴んだ物、それは折り畳み傘。
「あ、」
咄嗟に何か言おうと前を向いたら、
ふっと笑ったAが見えた。
それも束の間。Aは雑踏の中に溶け込んでいく。
折り畳み傘。
それは青と黒のチェックの可愛らしい傘で。
「は、似合わな。」
俺はポンと傘を広げると、
周りの視線と共に、家への道を進んでいった。
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錠前(プロフ) - ライムさん» ライムさん、コメントありがとうございます！楽しんでいただけたようで何よりです。これからも頑張っていきますので、何卒、よろしくお願いします。 (2019年6月30日 12時) (
レス) id: 09029ad6bb (このIDを非表示/違反報告)
ライム(プロフ) - 作品、めっちゃ素晴らしいかったです！！！これからも応援しています！ (2019年6月17日 6時) (レス) id: 928e00f70d (このIDを非表示/違反報告)
錠前(プロフ) - killlifeさん» killlifeさん、コメントありがとうございます！甘いだけじゃない恋、ある種の苦味のある甘酸っぱさ、そういうモノがこの作品のテーマのひとつだったので、伝わったようでとても嬉しいです。これからも頑張っていきますので、何卒、よろしくお願いします。 (2019年5月30日 19時) (レス) id: 09029ad6bb (このIDを非表示/違反報告)
killlife - とても良い作品でした。甘酸っぱくて何だか学生時代の頃を思い出しました。コメント頂けると嬉しいです。 (2019年5月27日 0時) (レス) id: a010fddd46 (このIDを非表示/違反報告)
錠前(プロフ) - はむめろんさん» はむめろんさん、コメントありがとうございます！心が動かされた、というお言葉、本当に嬉しいです。この作品を通して、貴方に『何か』が伝わったなら、それだけで私は満足です。新作も頑張っていきますので、何卒、よろしくお願いします。 (2018年8月18日 10時) (レス) id: 09029ad6bb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：錠前 | 作成日時：2016年10月22日 16時
