苛烈で過麗な一撃を (ページ14)

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十三話　守るページ14

そんな日常も戦争が始まれば静かなものである。
どの部隊も戦場に赴き、基地にいる者も忙しく走り回っている。
やることもない私は、部屋でそっと本を読んでいた。
『失礼いたします。A様』
一人のメイドがノックをし部屋に入る。
『紅茶をお持ちいたしました。』
「ありがとう。いただくわ」
紅茶の甘い匂いが心を落ち着かせてくれる。
『本日は、ディアナでございます』
「珍しいわね。この辺にはあまりないでしょう？」
『なんでもエーミール様が仕入れられたそうですよ』
「なるほど」
納得がいった紅茶好きの彼が仕入れたのなら味もいいはずだ。
香りを楽しんだ後、私は口をつけることなくティーカップを置いた。
「ねぇ、誰の命令？」

メイドが息をのんだ。
その態度に私は少し笑ってしまった。
「あなた分かりやすいのね。大方脅されているといったところかしら？」
『どうして…』
「ディアナの香りの中にほんの少しだけ香るジャスミンの香り」
ティーカップから香ることから縁にカロライナジャスミンの蜜を塗ってあるのだろう。
メイドが意を決して太ももに手をやる。
その手にそっと手を重ねた。
「大丈夫。そんなに震えないで教えて？貴方の本音を」
メイドは膝から崩れ落ちながら泣いた。
それを優しく頭をなでるその光景は、まさに聖母の様だった。

メイドには、弟がいる。敵国で難病にかかってしまったそう。
敵国から私を亡き者にする代わりに多額の援助をしてもらっているそうだ。
『最初は、弟のためだと覚悟を決めていたんです…でも、この国が温かくて…』
「そう、大丈夫よ。この国には神様がいるんだもの」
貴方の弟も大丈夫。そう伝えもう一度優しくメイドの頭をなでた。

泣き疲れ寝てしまったメイドにブランケットを掛け
夕暮れの基地を後にした。
怯える男の目に映るは赤い椿が描かれた着物姿の女性
一歩また一歩男に近づく
命乞いする男に刃を向ける女の目は何よりも暗く男を映した。
鮮血に染まった部屋には、椿の華が咲いた。

「しんぺいさん、少しいいですか？」
しん「ん～？どうしたん？」
「この病院の子の病室の男の子を見てあげてほしいんです」
そう言って、資料を渡せばしんぺいさんは笑って
しん「うんうん、正確なことは言えないけど助からないわけじゃない」
親戚かと聞かれれば、メイドの弟だと説明する。
メイド長からはきっちり怒られた。