欲望 ページ34
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そしてナイフの刃が
なぞっているのは“×”
「殺す、殺す！殺す！！」
悪魔の咆哮はあまりにも狂気じみていて、
布団から飛び出して浮く羽毛は
まるで彼に千切られた天使の羽根みたいだ
「駄目だ…駄目なのに！」
途中から彼の声は苦しげになって、
けど言葉に反して手はまだバツを刻み続ける
「カイ、もうやめて！」
止めてあげないといけない気がして
彼の腕を掴もうとしたけど、
「…いった」
刃が手の甲に当たって
じんわり血が滲んできた。
少しハッとしたように
カイの動きが止まる
「…そんな怯えた顔すんなよ」
「して、ないよ」
「…分かってる、
お前もそのうち俺を裏切る」
何の脈絡もなく、
寝る前の話題に戻った
「私最初にも言ったでしょ？
自分も法に触れたことをしてる以上
あなたを裏切ったら私も終わるって。
だから絶対裏切らな…」
「それは自分を守るためだろ？」
「それだけじゃない」
「じゃあ何だよ。
まだ俺に惹かれてるとか言うか？」
「そうだったら悪いの？」
彼の目が私の目をとらえて、
その怖さに思考が一瞬麻痺した
だから彼が私に馬乗りになっているのも
ナイフを突きつけられているのも
何秒後かにやっと認識した
(ああ、廃工場のときみたいだ)
「そういうのこそ信じられるか。
感情なんてすぐに変わるのが人間だ」
「じゃあカイは一体何を信じられるの？」
「分かりきったこと聞くな、
自分しか信じられないに決まってるだろ」
私を見下す彼の目は
穴が空いたように“無”だ。
きっと昔彼をそうさせた
何かが、誰かが、確かに在った
なんてかわいそうな人…ー
「そんなに信用できないなら
私の足でも切り落とせばいい。
どこにも逃げないから」
カイの空っぽの瞳が
一瞬揺らいだのを私は見た
「“死”以外なら何でもあげる。
だから私を信じてよ」
カイは「は」と嗤った
「そこまで言うなら
信じてやってもいいよ。
けどな…ー」
彼の瞳に悪魔の色が宿って、
片方の口端だけ持ち上げられた
「もし俺を裏切ったら
そのままお前も地獄行きだ」
爛々とした目は先程とは別人のよう
「地獄でもどこでもいい、
堕ちるとこまで一緒に堕ちるわ」
それを聞くと彼は満足げに笑って、
ナイフを置くと私の頬を撫でた
「かわいそうな女」
(私たちはお互いを哀れんでる、きっと)
次の瞬間カイの顔がすぐ近くにあって
私は呪文をかけられたかのように目を閉じた
その口づけは荒く、
微かに血の味がした
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かのか(プロフ) - す、スンゴイ面白い！ (2015年7月29日 16時) (
レス) id: 171b30f749 (このIDを非表示/違反報告)
りさ(プロフ) - 続きが気になります！ (2015年7月24日 21時) (レス) id: 3f43380847 (このIDを非表示/違反報告)
るんるん - 読んでるこっちが震えるほど面白いです（笑）更新待ってます！ (2015年7月21日 0時) (レス) id: 724eac6f67 (このIDを非表示/違反報告)
Tm(プロフ) - 更新いつも楽しみにしてます〜！最高です(ToT)/~~~ (2015年7月18日 16時) (レス) id: 3097d1d4b4 (このIDを非表示/違反報告)
りゅっちょん(プロフ) - すっ、凄すぎる★めちゃｺﾜｲ★でもハマります!!すごく好きです! (2015年7月18日 15時) (携帯から) (レス) id: 75eedf787c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぺっぱー
| 作成日時：2015年6月7日 1時
