盛衰 ページ18
.
.
勤務時間も終わりかけの頃。
「え、今からですか？」
「ああ、密入国者が集まっている
場所が分かったらしい」
慌ててコートを羽織るミンソク先輩の言葉に
私はがっくり肩を落としたくなった。
隣の同僚に至っては思いっきり顔に出ている
普段の私だったらいちいちこのくらいで
気分が落ちたりしないのだけれども…
「は〜…金曜日にこれかよ」
ビョンベッキョンのぼやきに
悔しいけど共感してしまった。
金曜日、今日はカイが踊る日なのに…ー
もちろんダンスが見たいのもある。
けどそれより今は心配の方が大きい。
昨日彼はひたすらバツを書き殴ると、
「ちょっと散歩してくる」
と、またスニーカーのかかとを
踏んづけて出て行ってしまったのだ。
朝起きても隣に彼はいなかったし、
果たして今夜踊るのかも謎だ。
「おい、ボーッとしてねえで行くぞ」
苛立つ同僚の言葉にハッとして
私もコートを羽織り直して部屋を出た。
.
結局、帰路についたのは11時すぎだった
「はあ…」
もうとっくに踊り終えているはずだと
諦めてそのまま帰ってきたのだ
案の定下から見ると部屋の電気は灯っていて
もうカイが帰ってきていることが分かる。
「ただいま…」
なんとなく小声で言って部屋に入ると
カイの姿は見当たらなかった
(寝室かな？)
するとガラッとドアの開く音
「あ、おかえり」
そこにはお風呂上がりで髪も濡れて、
下のスウェットしか履いていないカイがいた。
「ちょっと…」
「あー暑い」
思わず目を逸らす私に構わず
冷蔵庫をあさっている
昨日の様子が嘘だったかのようだ。
(よかった…)
そのとき彼の背中が見えて驚いた
しっかりと肩幅のある大きな背中には
いくつもの傷があったから。
「そんなに見るなよ」
私の視線に気づいた彼が
コップを傾けながら笑った
「あ、ごめん…」
なんだか見ちゃいけなかった気がする
「傷なら前にもある、ほら」
首にかけていたタオルをとると、
胸やお腹にも傷があった
古いものから真新しいものまで。
「ま、ろくな人生送ってないからな」
きっとこれ以上聞いても彼が
答えてくれないのは目に見えている
.
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2283人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かのか(プロフ) - す、スンゴイ面白い！ (2015年7月29日 16時) (
レス) id: 171b30f749 (このIDを非表示/違反報告)
りさ(プロフ) - 続きが気になります！ (2015年7月24日 21時) (レス) id: 3f43380847 (このIDを非表示/違反報告)
るんるん - 読んでるこっちが震えるほど面白いです（笑）更新待ってます！ (2015年7月21日 0時) (レス) id: 724eac6f67 (このIDを非表示/違反報告)
Tm(プロフ) - 更新いつも楽しみにしてます〜！最高です(ToT)/~~~ (2015年7月18日 16時) (レス) id: 3097d1d4b4 (このIDを非表示/違反報告)
りゅっちょん(プロフ) - すっ、凄すぎる★めちゃｺﾜｲ★でもハマります!!すごく好きです! (2015年7月18日 15時) (携帯から) (レス) id: 75eedf787c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぺっぱー
| 作成日時：2015年6月7日 1時
