愛おしい日々 (ページ1)

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「かーず、おはよう。起きれる？」

軽く肩をトントンとするとうっすら目を開いた和也に大きな口でそう伝える。コクンと頷いた和也はゆっくり体を起こし、ぎゅっと抱きついてきた。

これは和也なりの「おはよう、パパ」や。

サイドテーブルに置いとる箱から補聴器を2つ取り出して和也の耳につける。

和也はまだ1歳の時に髄膜炎にかかり、聴力をほとんど失った。補聴器をつければわずかに聞こえるらしいが普段は手話と口唇の動きを読むことでコミュニケーションを取っている。

「今日は和元気やから保育園いけそうやね」

そう言うたら和也はにっこり笑った。和也の笑顔はほんまに天使のように可愛ええ。亡くなった妻にとても似とる。

2人で朝ご飯を食べて保育園の準備をして、車で送っていく。

和也は生まれつき心疾患もあって、体もかなり弱い。

手術や検査で入退院を繰り返し、ようやく心臓の手術も一段落して、家で過ごせるようになってきた。

病気のある子でも預かってくれる保育園も何とか見つかって、それで俺はずっと在宅ワークやったけど少しずつ会社に行く日を増やしとる。

「和、いってらっしゃい」

最初は俺から離れたがらなかった和也やけど、だんだん慣れてきて友達も出来たようで最近はさっさと中に入っていくようになった。

俺はそのまま会社に出勤した。

いつも保育園から電話が来ないかドキドキしてまう。和也に何かあったらと思うと気が気でない。