11頁 ページ11
「ほんまに、今日はありがとうな。先生」
20時30分を少し過ぎた頃、もうすぐ閉店になる
というのもあって私たちは勉強を止めた。
「あの、もしかしていつもここ来てる？」
荷物を片付けながらそう尋ねると、
「おん、だいぶ迷惑な客やな。俺」
と彼はおどけて笑った。
「もし良かったら、また一緒に勉強しない？
私の学校、ここに近いし……」
断られたらどうしよう、と思いながら提案すると
「え、マジで？ ええの？やったー！」
と、大げさなぐらいに喜んでくれて嬉しくなった。
「名前、聞いても良い？」
そう言えばずっと聞いていなかった、と思い出す。
「廉やで。永瀬、廉。永遠の方のながで、
さんずいのせ、に清廉潔白、とかのれん。
なんや、この説明恥ずいなぁ。自分で言うの」
がはは、と独特の笑い声をあげた彼はすぐまた
「先生は？」と聞いてきて、
ちょっと複雑な気持ちになりながらも
「平野A……永瀬くんは駅使うの？」
と帰り道を尋ねれば、
「……いや、俺は徒歩やからさ」
と言って黒いリュックをひょいと背負った。
そのまま2人で店の外に出る。
「そっか……じゃあ、またね」
そう言って私が彼に背を向けると、
「あの、……俺のこと、名前で呼んでくれへん？」
彼が少し恥ずかしそうにそう尋ねてきて、
ちょっとかわいいな……と思った。
「良いよ、廉くん」
何でもないようにそう呼んだけど、
声に出してみると少し韻を踏んだような4つの音は
不思議と心地良くて何度でも呼びたくなる。
「ありがとう、……A先生」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 666人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夜木(プロフ) - れんまるさん» ありがとうございます。愛・感謝です笑 (2019年3月2日 12時) (
レス) id: bbfe081cd6 (このIDを非表示/違反報告)
れんまる(プロフ) - 更新お疲れ様です！夜木さんの作品好きで全部読ませていただきました(^^)今後の展開が楽しみです。これからも読ませていただきます！ (2019年3月2日 12時) (レス) id: 2dddd4dbd5 (このIDを非表示/違反報告)
夜木(プロフ) - あんぱんまんさん» ありがとうございます。頑張ります。 (2019年3月1日 21時) (レス) id: bbfe081cd6 (このIDを非表示/違反報告)
あんぱんまん - 早く続きが読みたいです！ (2019年3月1日 21時) (レス) id: c8796e2e4b (このIDを非表示/違反報告)
rainbow(プロフ) - 頑張ってください！！ (2019年2月28日 0時) (レス) id: 0b385c0c45 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：夜木 | 作成日時：2019年2月27日 17時
