どうして(DIO) ページ6
星空の輝きが急に恐ろしくなった。
せっかくあの化け物の棲む館を命からがら逃げ出してきたっていうのに、どこに行ってもわたしは化け物の恐怖から逃れられぬらしい。まるであの男の眼差しみたいにギラギラと星が輝いていた。
それに目を塞いでも、あの男の姿がこびりついて離れない。蜂蜜色の金髪、妖しい色気を携え微笑し、こちらを見つめ返す不敵な視線……ああ、幻聴が聞こえる。『わたしに永遠に仕えないか』__ああ、永遠にあの悍ましい吸血鬼に仕えるなんて想像するだけで恐ろしい! わたしの何が男にとって魅力的に映ったというのだろう……スタンド? わたしのスタンドがいけないのだろうか? 時を『弛緩』させる……いわば、万物万象いかなる時の流れをも緩やかにするだけの、わたしの使えないスタンドが?
『きみのスタンドがあれば、わたしはわたしの望む天国への道を進むことができるのだろう。……A。わたしはきみをますます手放せなくなってしまったな。もっとも、元より手放すつもりなどないがね…………』
元より、とあの時男は言っていた。ならば、わたしのスタンドが原因ではない?
ではいったい何が原因なのだ、その原因さえわかれば、わたしはそれを根絶し断絶し破壊して、二度と男に必要とされなくなり追われることもなくなるだろうに……わたしはなぜ、あんな化け物に好かれなければならない。
「__ああ、こんなところに居たのか」
反射的にナイフを投げる。しかしいつの間にかわたしは路地の壁際に押しやられ、身動きの取れない状況になってしまっていた。
彼は一体どんな規格外のスタンドを持っているんだろう! 本当に刹那の出来事で、まるで瞬間移動でもしたかのようだった……。
DIOの瞳に子鹿みたいに震えるわたしの滑稽な姿が映る。はだけた胸元、涙の浮かぶ眼差し、ぼさぼさの髪__クッと心底おかしそうに嗤った吸血鬼に、わたしの瞳からいよいよ耐え切れなくなった涙が一粒こぼれ落ちた。
「おいおい、泣くなよなァ。せっかくこのわたしが直々に迎えに来てやったのだから、泣くならせめて嬉し涙を流してほしいものだ……」
「ど、どうして…………」
「『どうして』? そう問われて素直にこのDIOがホイホイ答えを返すとでも思ったのか? ン?」
悪いきみには少しばかりお仕置きが必要らしいな、そう告げるとDIOはわたしの額に指先を当て、そこでわたしの意識は途切れた。
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とある決闘者(プロフ) - リルスさん» 感想ありがとうございます。キュンキュンしてくださっただなんて……その言葉だけでとても頑張れます。改めてありがとうございます! (2017年12月12日 21時) (レス) id: c74a5c30fb (このIDを非表示/違反報告)
リルス(プロフ) - この作品を見て、久しぶりにジョナサンとディオ様にキュンキュンきた…!更新がんばって下さい! (2017年12月12日 21時) (携帯から) (レス) id: 5254e9f568 (このIDを非表示/違反報告)
とある決闘者(プロフ) - おバカな傀夢さん» 傀夢さんありがとうございます! いつもあなた様のコメントに励まされています。是非是非お楽しみください! (2017年12月11日 22時) (レス) id: c74a5c30fb (このIDを非表示/違反報告)
おバカな傀夢(プロフ) - とある決闘者様の作品はどれも好きなので、この短編集も楽しみに更新を待ちます!更新頑張ってください!応援してます!他の作品も楽しみです!! (2017年12月11日 17時) (レス) id: 5ff30031ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とある決闘者 | 作成日時:2017年12月10日 22時