遺書��(シーザー) ページ11
シーザー・A・ツェペリが死んだと聞いたのは、彼の顔を見なくなってから数ヶ月は経った頃だった。
わたしの両親は喫茶店を経営していて、わたしはそこの看板娘。働いている時に、わたしは偶然彼と出会ったのだ。彼こそがシーザー・ツェペリ。彼は足繁く通ってはわたしを口説いていた。
看板娘であるわたしにとってナンパというのは慣れたものではあったが、しかし、何ヶ月も通い続け愛を囁く彼にわたしはとうとう折れたのだ。やがて自然と恋人になり、愛が育まれていき、ゆくゆくは結婚するはずだった……。
「アンタがAちゃんで合ってる？」
その日、彼だけが座ることのできる窓際の特等席に、見慣れない男が座っていた。軽薄そうな顔をした男はジョセフ・ジョースターと名乗った。何でも彼とは友人だったらしく、聞いてもいないのにベラベラと彼と如何に出会い友人となったのかを語っていく。それに苛々したわたしは「何をしに来たの」、確かそんな内容の言葉を言ったように思う。
すると男は、目を見開いて、それから目を伏せた。
口がモゴモゴと動いていて、男が口を開く前にわたしは内容を察してしまった。女の勘というものはよく当たるのだ。勿論、どんなに嫌なものでも。
「……シーザーは死んだの？」
ぽつりと漏らせば、男は気の毒そうにわたしを見た。ええそうね、一年も帰らない恋人を待つ女なんて滑稽ですものね。彼はわたしが好きだった。わたしも彼が好きだった。相思相愛、絶対に結ばれるのだと信じていたからこそ、死んだなんて信じたくはなかった。
「シーザーから…………何かあった時のための保険とかいって、伝言を預かってるぜ」
男は呟いた。目はどこか遠くの方を見つめているようで、わたしの視線と合わさらない。わたしは力なく笑った。
「いらないわ、伝言なんて」
「聞かないつもりなのか？」
男は目をこぼれ落ちそうなぐらい見開いた。
「ええ。今更そんなこと聞いちゃったら、わたしも彼の後を追っちゃいそうで怖いから。＿＿お墓の場所も教えないで結構よ。ただでさえ後悔ばかりなのに」
「……おい、Aちゃんとやら。後でもっと後悔しても知らねーぞ！」
「い・い・の！ そんなの聞かなくたって、わたしは後悔しないんだから」
「そうかよッ！ ったく、せっかく場所突き止めてきたってのによォ〜、肝心のアンタが逃げてるんじゃ意味ねェだろーが……」
いつかシーザーの死と向き合えた時にこれを読め、と言うと男は茶封筒を手渡し店を出ていった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 36人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「短編集」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
とある決闘者(プロフ) - リルスさん» 感想ありがとうございます。キュンキュンしてくださっただなんて……その言葉だけでとても頑張れます。改めてありがとうございます！ (2017年12月12日 21時) (
レス) id: c74a5c30fb (このIDを非表示/違反報告)
リルス(プロフ) - この作品を見て、久しぶりにジョナサンとディオ様にキュンキュンきた…！更新がんばって下さい！ (2017年12月12日 21時) (携帯から) (レス) id: 5254e9f568 (このIDを非表示/違反報告)
とある決闘者(プロフ) - おバカな傀夢さん» 傀夢さんありがとうございます！ いつもあなた様のコメントに励まされています。是非是非お楽しみください！ (2017年12月11日 22時) (レス) id: c74a5c30fb (このIDを非表示/違反報告)
おバカな傀夢(プロフ) - とある決闘者様の作品はどれも好きなので、この短編集も楽しみに更新を待ちます！更新頑張ってください！応援してます！他の作品も楽しみです！！ (2017年12月11日 17時) (レス) id: 5ff30031ff (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：とある決闘者 | 作成日時：2017年12月10日 22時
