人魚姫(ジョナサン) ページ2
人魚姫は報われない。王子様とは結ばれず、その身は泡となり消える。わたしは多分、そんな報われない人魚姫なのだ。だって、その王子様とは間違いなく結ばれないし、それでも彼を助けるためならこの身の命が尽きても構わなかったのだから。
胸に空いた空洞にわたしは微笑む。わたしは間違いなく今ここで死ぬ、そう確信したからだった。
手をかけたはずの相手は笑うことはせず、ただそんなわたしを見つめている。微かに目が開いていた。
そんな彼の表情を見たのは初めてだったので、意外に思うと同時、少々生を手放すことを名残惜しく思った。死の間際になって、人間というものは未練がたくさん浮かぶらしい。今更だ。未練なんて、いらないのに。
「おまえ、なぜジョジョのためにそこまでするのだ?」
人間をやめた彼の問いに、わたしは何も返さない。否、何も返せなかった。声帯は傷つけられ、口を開いてもひゅーひゅーという音しか聞こえないからだ。それに気づいたのか、ディオは忌々しいと呟く。目には様々な悪感情の他に……驚くことに、多少の哀れみの色があった。「可哀想なやつだ」、ディオが口を開く。
「おまえが死んだら、ジョジョは悲しみ、怒るだろう」
怒る? それはそうでしょう。ジョナサンはとても優しいひとだし、父の仇である貴方を完全に憎みきれていないほど、深い優しさを持つひとなんだもの。
「しかしおまえはジョジョに深くは想われていない。あくまでおまえという人間は、ジョジョにとって友人という枠でしかない。その感情を知らせず、知られずに散っていくのは、辛いんじゃあないか?」
辛くなんてないわ。ジョナサンに余計な負荷をかけたくないもの。わたしはこの恋を秘めたまま死ぬの。彼は麗しきエリナ・ペンドルトンと結ばれる。両想いでハッピーエンド。めでたしめでたしじゃあないの。
……そこに、わたしみたいな不純物を混ぜるべきではないのよ。
「このおれがおまえを死屍人にしてやろうか。いや、その目は__望みじゃあないのか。まったく、頑固な女だ」
当たり前でしょう。馬鹿馬鹿しいにもほどがある。わたしは死んでまで恥ずかしい、未練がましい姿を見せたくないわ。誰だってそうでしょう、深い眠りは決して妨げてはならない。ディオは違うんでしょうけどね。
「……A、といったか。遺言は何かあるか? ジョジョに伝えといてやる」
……声が出ないんだから遺言なんて無駄でしょ。でも、ありがとう、ディオ。
ジョナサン、大好きよ__
36人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「短編集」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
とある決闘者(プロフ) - リルスさん» 感想ありがとうございます。キュンキュンしてくださっただなんて……その言葉だけでとても頑張れます。改めてありがとうございます! (2017年12月12日 21時) (レス) id: c74a5c30fb (このIDを非表示/違反報告)
リルス(プロフ) - この作品を見て、久しぶりにジョナサンとディオ様にキュンキュンきた…!更新がんばって下さい! (2017年12月12日 21時) (携帯から) (レス) id: 5254e9f568 (このIDを非表示/違反報告)
とある決闘者(プロフ) - おバカな傀夢さん» 傀夢さんありがとうございます! いつもあなた様のコメントに励まされています。是非是非お楽しみください! (2017年12月11日 22時) (レス) id: c74a5c30fb (このIDを非表示/違反報告)
おバカな傀夢(プロフ) - とある決闘者様の作品はどれも好きなので、この短編集も楽しみに更新を待ちます!更新頑張ってください!応援してます!他の作品も楽しみです!! (2017年12月11日 17時) (レス) id: 5ff30031ff (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:とある決闘者 | 作成日時:2017年12月10日 22時