魔王愛を捨てた復讐鬼 (ページ3)

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第三話ページ3

芹沢直人は携帯を閉じ、渋谷北署を後にした。たった今成瀬を例の場所に呼び出しところだ。

父さんを見たとき、父さんの倒れた姿を見たとき、この世の終わりを感じた。息が詰まって時間の流れが止まったようだった。気がついたら涙が流れていた。

あと少しだった。もう少しで父さんと分かり合えるはずだった。父さんともっと話したいことがあったのに。11年間ほとんど会話してこなかったぶん、親孝行しようと思ったいた。すべてを後回しにして生きてきた自分を恨む。

あいつが全て奪っていった。親友も、兄も、父も奪われてこれ以上許せるわけがなかった。父さんの亡骸と、机の上に無造作に置かれたタロットカードを見たときに芹沢は決めた。

成瀬を殺すと。

ふつふつと成瀬への殺意が沸いてきて、自分ではもう止めようがなかった。感情のままに身体が動いた。殺さないと、この怒りは静まらない。

むしろ、なんで今まで殺さなかったんだろうか。不思議だった。これ以上ない失態だ。もっと早く殺していれば、大事な人たちが死ぬことはなかった。

今さらどうしようと取り返しのつかないことなだけに、なおさら憎悪が増していく。この憎悪は成瀬だけに向けられたものじゃない、と俺自身も気づいていた。

憎いのだ。自分自身が。どうしようもなく。

俺が起こした11年前の事件がすべての引き金となった。俺があの事件さえ起こさなければ、この事件も起きなかった。誰も死ぬことはなかったし、成瀬が殺人鬼になることもなかった。

すべて俺が悪いんだ。成瀬を殺してもきっとこの怒りは消えやしない。

だったらせめて、あいつは殺さなければ。そのくらいしなければ、もう俺は生きていけない。あいつが奪った命の重さを考えれば、あいつは何度死んだって足りないくらいだ。

ぐるぐると同じことを考えながら芹沢はただ歩き続けた。成瀬に電話をした後は携帯の電源は切っておいた。銃を一丁無断で持ち出している。署から連絡が来ることはわかっていた。同僚には申し訳ないが、邪魔されるわけにはいかない。そのうち俺の行方を署を挙げて探し始める。そうなればあの場所はすぐにバレるはずだ。時間がない。

殺してやる。俺が裁いてやる。この手でこの復讐を止めなければならない。俺の手で成瀬を殺すまでは、俺は成瀬に殺されるわけにはいけないのだ。これは俺なりのけじめだ。俺がとどめを刺すべきだ。

行かなければ。最期の戦いに。