永遠のMORSE(3) ページ8
カランーー
店のドアが開き、静かに客が入って来る。
「いらっしゃいませ」
リュウの声に応えるでもなく、その客は動きを止めた。
「オスカー？」
その声は、他の誰でもない、
「父さん・・」
懐かしい父さんの声。
少し年をとってはいるものの、優しい眼差しはあの頃のまま。
「お前、」
父さんの隣りには昔と変わらず淳太くんが寄り添っていて、
寂しいような、でも嬉しいような、複雑な気分になる。
父さんは怒っているみたいに唇を震わせる。
僕は立ち上がることもできず、ただ父さんを見つめていた。
淳太くんが父さんの肩を叩くように擦り、
「俺帰るから話してき」
そう言って店を出て行った。
ーーーーーー
「どうしてたん、今まで」
ようやく椅子に腰を下ろした父さんが、お酒を口に含んでから言った。
「うん」
「うんじゃわからん」
責めるでもなく、目を合わせもせずに言う。
「女の人と、暮らしとる」
「恋人か？」
「・・そうや」
「なんで、母さんに何も言わんと家を出たんや」
その言葉にも、非難の色は感じられない。
「ごめんなさい。母さん、元気でおる？」
「元気や・・あらへんな」
「なんかあったん？！」
心配になって大声を出すと、父さんは哀しそうに笑った。
「それは母さんの問題や」
そう言って立ち上がる。
「父さん！」
お金を置いて背中を向けた父さんが振り向いて、僕に言う。
「俺かてそうやもんな」
「何が？」
「彼女を大事にせぇ」
「えっ」
「一人を幸せにするので精一杯な人間もおる。
お前は俺に、似てもうたんやな・・」
また扉が、カランと音を立てた。
ーーーーーー
「ただいま」
部屋に戻ると、エリがソファに座って本を読んでいた。
「METEORに行っとったん？」
「うん」
コートを掛けて隣りに座ると、本を置いて肩に腕をまわして来る。
「寒かったやろ？」
「まぁ、そやな」
「あっためたろか？」
「そんなことできひんくせに」
「・・そやな」
十年のうちに積もった不安も不満も、俺が耐えればどうにかなる。
そう思っていたのに。
耐えさせていたのは、エリにだった。
「隣りの部屋の人がな、最近喧嘩多いようやからって、くれてん」
テーブルの上のアップルパイ。
「あん人が作ったらしいで。一緒に食べて仲直りせぇって・・」
涙も流せないエリの目が、泣いていた。
俺はたった一人のエリさえも、
幸せにできずにいた。
fin.
俺のThanksgiving Day・・・濱田×淳太→←永遠のMORSE(2)
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しろくま ．○(プロフ) - 大福もちこさん» 返事遅くなっちゃってすみません！ありがとうございます！！楽しみです(((o(*ﾟ▽ﾟ*)o))) (2016年8月23日 2時) (
レス) id: 984ff39804 (このIDを非表示/違反報告)
大福もちこ(プロフ) - しろくま ．○さん» しろくまさん、リクエストありがとうございます＾＾遅くなりましたが承りました！がんばりますね〜♪ (2016年7月28日 0時) (レス) id: 2b183af5c8 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま ．○(プロフ) - 小説面白いです！いきなりですけどリクエストいいですか？のんちゃんが女体化してしげりゅせに取り合いされてるのを見てみたいです！これからも更新がんばってください！ (2016年7月13日 11時) (レス) id: 984ff39804 (このIDを非表示/違反報告)
大福もちこ(プロフ) - 赤兎さん» いえいえーどうもありがとうございます＾＾リクエストうれしいです。重岡さん総受ですか。む、難しいけどがんばってみまーす！！ (2016年4月16日 21時) (レス) id: 2b183af5c8 (このIDを非表示/違反報告)
大福もちこ(プロフ) - 森村里桜さん» わぁ〜本当ですかっ嬉しいです！感想頂けるのすごくうれしい＾▽＾かなりゆっくり更新ですが、これからも楽しんで貰えるようにがんばります♪ (2016年4月16日 21時) (レス) id: 2b183af5c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：大福もちこ | 作成日時：2015年12月14日 0時
