ウラオモテ(2) ページ38
ずっと好きやった。
初めてその人と会うたのは、日曜のオフィス街。
会うたと言うより、見た言うんが正しいんやけど。
ひと気のない昼間の横断歩道で。
どこから来たのか重そうな荷物を背負ったおばあさんに声を掛け、
それを変わりに背中に乗せた。
渡りきったら荷物を降ろすとばかり思っていたのにその人は
そのままおばあさんについて行って、
多分目的地までその荷物を運んであげて。
しばらくして横断歩道の前まで戻って来たその人は、
急いでいるのか息を切らせて走っていて。
ああ、ええなぁって。
自分も急いでいるのに、優しく笑って・・。
検温の時間だと部屋に入って来た看護婦さんに気づかないくらい。
俺はその人に、見惚れていたんや。
ーーーーーー
「望くん？」
「・・・」
「そろそろ窓閉めるね」
病院から長い外泊許可を貰って。
その人の会社を探して。
偶然を装って近付いた。
気持ち悪いと思われるかも知れない。
やけど、
残り少ない人生を。
自分の思うように生きてみたかった。
自分の好きな人のそばで、生きてみたかったから。
俺を一人にせんとってと泣きながら言った淳太を。
本当に一人にするのが辛くて。
自分勝手に淳太の前から消えた。
そしたらきっと、
淳太は怒るやろ？
泣いたりせんで。
俺のために、胸を痛めたりせんで欲しかった。
ーーーーーー
「望くん、帰って来てから元気ないですよね・・」
望の病室から戻ったナースが言った。
好きな人ができたから、死ぬ前に告白したい。
一緒におりたいと
望が頼みに来たのは一年前のこと。
望の命があと僅かなことは確かで。
弟みたいに思っている望の願い事は
できるだけ叶えてやりたかった。
「ちょっと話してくるわ」
俺はそう声を掛け、ナースステーションを出た。
ーーーーーー
「のぞむー」
病室に入ると、窓枠に寄りかかって外を眺めていた望が振り向いた。
「濱ちゃん」
「おう、濱ちゃんやで！」
笑って言ったつもりやったのに、望はぼんやりと俯いてまた窓の方を向く。
「幸せやったんやな」
隣に行ってつぶやくと、え？と言うように望がこっちを見た。
「外泊前よりお前の体、ずっと元気になっとったで」
「ほんまに？」
「ほんまや。濱ちゃんが嘘ついたことあった？」
「うん」
「うんやあらへんがな！”ない”やろここは！」
「けど今、なんか顔変やもん。嘘つこうとしてる・・気がする」
つづく
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 210人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しろくま ．○(プロフ) - 大福もちこさん» 返事遅くなっちゃってすみません！ありがとうございます！！楽しみです(((o(*ﾟ▽ﾟ*)o))) (2016年8月23日 2時) (
レス) id: 984ff39804 (このIDを非表示/違反報告)
大福もちこ(プロフ) - しろくま ．○さん» しろくまさん、リクエストありがとうございます＾＾遅くなりましたが承りました！がんばりますね〜♪ (2016年7月28日 0時) (レス) id: 2b183af5c8 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま ．○(プロフ) - 小説面白いです！いきなりですけどリクエストいいですか？のんちゃんが女体化してしげりゅせに取り合いされてるのを見てみたいです！これからも更新がんばってください！ (2016年7月13日 11時) (レス) id: 984ff39804 (このIDを非表示/違反報告)
大福もちこ(プロフ) - 赤兎さん» いえいえーどうもありがとうございます＾＾リクエストうれしいです。重岡さん総受ですか。む、難しいけどがんばってみまーす！！ (2016年4月16日 21時) (レス) id: 2b183af5c8 (このIDを非表示/違反報告)
大福もちこ(プロフ) - 森村里桜さん» わぁ〜本当ですかっ嬉しいです！感想頂けるのすごくうれしい＾▽＾かなりゆっくり更新ですが、これからも楽しんで貰えるようにがんばります♪ (2016年4月16日 21時) (レス) id: 2b183af5c8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：大福もちこ | 作成日時：2015年12月14日 0時
