蜘蛛の罠�◆雰勅法� ページ49
その後は私が一人ぶつぶつ言いながら駒を動かしても、戦略については比較的饒舌な慶舎様は、口を真一文字に結びながら盤面全体を見通しているだけだ。
手の動く方へ鋭い目が右へ左へ動くのみ。
じっと押し黙っていられるとこれで正しいのかよく分からなくなる。
そろそろお伺いを立てようと最後の駒を移動させた時のこと。
急に慶舎様が手を掴んできて、私は持っていた駒を盤面の上に落としてしまった。
慶舎様らしからぬ行動はまったく一瞬の出来事で、再考していた軍略も思考も忘れさせるものだった。
『…！ここに動かしてはいけませんでしたか⁈』
「いや、そうではない。」
慶舎様は言葉を続けず、私の手をくるっとひっくり返したり、手のひらや指をなぞったりして少しくすぐったいように感じた。
射るような眼差しで見つめてくる大きな目は相変わらず感情が読めないでいる。
それに傷跡がまだ消えていない手をまじまじと見られるのは少し抵抗があるものだ。
しかし私には振り払えるはずもなく流れに任せていると、慶舎様は自身の指を滑らせながら絡めてきてドキリとした。
遠慮がちにその顔を見ると、開かれている目が少し細められ、尚も指先だけ触れたり深く絡めたりを繰り返している。
「美しい手だ。この傷跡がより助長させ、私の感覚を刺激する。」
『それは褒められて…いるのですか？』
「以前より思っていたことだ。わからぬか。」
わ、分かりづらすぎる…！感覚が独特すぎて。
慶舎様はスッと立ち上がり、そのまま回り込んできて私も立ち上がらせた。
「人は私を沈黙の狩人と呼び、その名の通り罠を仕掛けアミにかかる時を待っていたが…不思議だ。こうして触れているとこちらが罠にはまっていくようだ。」
いまだ繋がれたままの手を引き寄せ、私の顎を持ち上げると無機質な表情と目が合う。
慶舎様の見下ろす顔が近付いたと思ったら唇に生暖かい感触が降ってきた。
それでいて柔らかく、じんわりと体温が伝わってきて口付けされていたことに気付く。
「なるほど。攻めを担うのも悪くない。」
あまりに突然のことに固まっていた私は慶舎様の攻めの姿勢を受けて、初めてその想いを知った日だった。
自分の大きな音の鼓動を聞くと、アミにかかったのはこちらの方かもしれない。
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ずーみん(プロフ) - 春雷さん» 素敵な感想を頂きましてとても嬉しいかぎりです。今書いているものが完成したらまた蒙恬に着手しようと思います！たくさん読んでくださってありがとうございました！ (2021年6月16日 20時) (
レス) id: 366da61a1e (このIDを非表示/違反報告)
春雷(プロフ) - ほんと良いです！切なくなったり、色々と思ってしまいました。どの作品も文章や表現が綺麗で、ファンになりました！これからも楽しみにしています！蒙恬のお話を特にお待ちしております (2021年6月16日 14時) (レス) id: 50c46308fb (このIDを非表示/違反報告)
とも - 毎日楽しみに読ませてもらってます！街で出会ってから一目惚れされて仲良くなって告白されるまでを書いていただきたいです！多いですが王賁と蒙恬と信と政をお願いします！！ (2020年11月27日 7時) (レス) id: 382e67ae5e (このIDを非表示/違反報告)
ずーみん(プロフ) - 凛さん» 凛さん≫お待たせ致しました。ページが一杯になってしまったので、短編集続編の方に載せました。少々サッパリした展開で上手く書けたか分かりかねますが、書いてて楽しかったです、リクエストありがとうございました！ (2020年11月27日 1時) (レス) id: 366da61a1e (このIDを非表示/違反報告)
凛 - 有難うございます！楽しみにしています！ (2020年11月23日 18時) (レス) id: 61c2aa8520 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：プラリネ | 作成日時：2020年9月6日 2時
