片恋（王賁） ページ30
山陽攻略にて魏軍を破った秦軍は、周辺一帯を平定するために臨戦態勢のまま、その地に残った。
王翦軍に組み込まれた玉鳳隊もそのまま守備に当たっている。
そして俺が正式に千人将となってからまだ日が浅い。
最近忙しそうにあちこちを走り回る女がいるとは思っていたが七百人増員した結果、救護兵として新しくやってきたようだ。
我が玉鳳に割り当てられたということはそれなりに実力も兼ね備えているだろう。
だが俺としてはやりにくいことこの上ない。
今まで女と接するのはせいぜい使用人と交わす言葉のみだったからだ。
水気を含ませた手拭いを絞り、顔を拭いていると明らかに近寄ってくる気配がする。
俺は無意識のうちに身構えた。
『賁様、輪虎とやらに受けた傷の経過を見せて下さい。』
「要らぬ世話だ。」
『まだ傷を受けてから日が浅いでしょう。ちゃんと治療しないと化膿して傷の治りが遅くなり、その悪い毒が全身を巡って最悪の場合は死に至りますよ。』
なんと不吉な、よくもまぁここまで闇に突き落とすようなことを淡々と言うものだ。
了承を得ないまま、女は失礼しますねと言い掛襟を外しにかかった。
「おい…自分でやる。」
治療を受けてくれるのなら満足だと言わんばかりの顔で待つ女を尻目に、渋々傷口を見せた。
当て布を取り、消毒のために酒をかけ始める。
なんでも清潔に保つことが何より大事なのだと聞いてもいないのに教え込まれた。
紫草の汁を塗り込み再び当て布をし、包帯を巻く。
たったこれだけの工程だったが、その感触は非常に滑らかでたおやかであった。
この繊細さは男と女の違いか。
「女、名は。」
『Aと申します。ちゃんと覚えておいて下さいね。』
片付けた医療用具を抱えヒラヒラと手を振る様は俺をからかっているのか。
Aと名乗ったアイツは忙しそうに次の怪我人の元へ走って行った。
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ずーみん(プロフ) - 春雷さん» 素敵な感想を頂きましてとても嬉しいかぎりです。今書いているものが完成したらまた蒙恬に着手しようと思います！たくさん読んでくださってありがとうございました！ (2021年6月16日 20時) (
レス) id: 366da61a1e (このIDを非表示/違反報告)
春雷(プロフ) - ほんと良いです！切なくなったり、色々と思ってしまいました。どの作品も文章や表現が綺麗で、ファンになりました！これからも楽しみにしています！蒙恬のお話を特にお待ちしております (2021年6月16日 14時) (レス) id: 50c46308fb (このIDを非表示/違反報告)
とも - 毎日楽しみに読ませてもらってます！街で出会ってから一目惚れされて仲良くなって告白されるまでを書いていただきたいです！多いですが王賁と蒙恬と信と政をお願いします！！ (2020年11月27日 7時) (レス) id: 382e67ae5e (このIDを非表示/違反報告)
ずーみん(プロフ) - 凛さん» 凛さん≫お待たせ致しました。ページが一杯になってしまったので、短編集続編の方に載せました。少々サッパリした展開で上手く書けたか分かりかねますが、書いてて楽しかったです、リクエストありがとうございました！ (2020年11月27日 1時) (レス) id: 366da61a1e (このIDを非表示/違反報告)
凛 - 有難うございます！楽しみにしています！ (2020年11月23日 18時) (レス) id: 61c2aa8520 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：プラリネ | 作成日時：2020年9月6日 2時
