不意を突く顔�◆別慝�） ページ3
後ろから声をかけられたAは歩みを止め肩に置かれている手の方へ顔を向けた。
彼女の怪訝そうな表情を見た蒙恬は、
「ああ、良かった。ちゃんと生きているって顔してるね。」
突拍子もない発言を耳にしたAはそのまま聞き流して歩みを進めようかと思ったが、肩に置かれたままの手に力が入る。
『何か御用でしょうか。』
潤いのない声を聞いた蒙恬は、思い詰めた顔をしていたからさ、と簡潔に返した。
ーーー
『それで、何故あなたとこの茶屋に』
「まぁまぁいいから座って座って！ここの茶は良い味だよ。話し相手が欲しくて俺もまだ帰りたくなくてね。ここは付き合ってくれるお礼」
持ち合わせがあまり無いことを理由に断っても通じず、ここで会ったのも何かの縁だよ、とAは半ば強引に連れてこられた。
温かい茶を含みながら蒙恬は自身の他愛無い話を始める。
隊を率いて街へ繰り出した話、お見合いを抜け出した時の話、じィにいつも尻拭いをさせている話…
今この時だけは何のしがらみも無く聞いてくれればいいと話し続ければ、時折和らぐAの顔に引き込まれた。
話しながらふと、蒙恬が矛盾に思うことが二つあった。
Aが身に纏っている衣の生地や刺繍はおおよそ平民では手が出せない代物だ。
それなのに先ほど持ち合わせが少ないと言っていたこと。
所作の美しさからして高い身分の女性だろうが、従者も護衛も付けず一人で歩いていたこと。
本人の口から真相を聞かなければ想像の域を出ない。しかし頭が切れる彼の導き出す答えは明白だろう。
声をかけた時のAの顔や雰囲気も物語っていたからだ。
蒙恬は思慮を巡らせながらAに目を向ける。
彼女の抱えるものは思ったより根深い。
このまま今日限りの関係にしておくか、否か。
そんな時、Aは蒙恬の目をとらえ、
『…本日の楽しいひと時に心から感謝致します。』
言い終えてから少し俯く顔は微笑んでいた。
ーあぁそうだ。
Aを呼び止めた時から決まっていた。
面倒見の良い蒙恬の出した答えは″否″だ。
この気持ちがただの気質から来るものなのか、別の想いからなのか。
真意はもう少し先にとっておくかと蒙恬は口角を上げた。
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ずーみん(プロフ) - 春雷さん» 素敵な感想を頂きましてとても嬉しいかぎりです。今書いているものが完成したらまた蒙恬に着手しようと思います！たくさん読んでくださってありがとうございました！ (2021年6月16日 20時) (
レス) id: 366da61a1e (このIDを非表示/違反報告)
春雷(プロフ) - ほんと良いです！切なくなったり、色々と思ってしまいました。どの作品も文章や表現が綺麗で、ファンになりました！これからも楽しみにしています！蒙恬のお話を特にお待ちしております (2021年6月16日 14時) (レス) id: 50c46308fb (このIDを非表示/違反報告)
とも - 毎日楽しみに読ませてもらってます！街で出会ってから一目惚れされて仲良くなって告白されるまでを書いていただきたいです！多いですが王賁と蒙恬と信と政をお願いします！！ (2020年11月27日 7時) (レス) id: 382e67ae5e (このIDを非表示/違反報告)
ずーみん(プロフ) - 凛さん» 凛さん≫お待たせ致しました。ページが一杯になってしまったので、短編集続編の方に載せました。少々サッパリした展開で上手く書けたか分かりかねますが、書いてて楽しかったです、リクエストありがとうございました！ (2020年11月27日 1時) (レス) id: 366da61a1e (このIDを非表示/違反報告)
凛 - 有難うございます！楽しみにしています！ (2020年11月23日 18時) (レス) id: 61c2aa8520 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：プラリネ | 作成日時：2020年9月6日 2時
