雨の恩恵�� ページ48
足元が滑り前方に倒れ込みそうになったところを、咄嗟に空いている方の腕で支えられた。
けっこう勢いづいてしまっていたのに眉一つ動かさず受け止める慶舎様って細身に見えるけど鍛え上げられた体なんだなぁ。
と呑気にその魅力を再確認しているのも束の間だった。
支えられたまでは良かったんだけど…慶舎様の手が一部私の胸に触れている…！
それに思い返せば転びそうになった時、何て可愛げのない声を出してしまったんだ。
わずかの間にいろんなことが起きるし考えが巡って頭が真っ白になった。
「…注意を払え。行くぞ。」
『は、はい。あの…ありがとうございます。』
慶舎様は何事もなかったように、再び私の手を掴み歩き始めた。
気を遣って歩きやすい方へ導いてくれているのに何たる体たらく。
呆れてしまったかな…呆れるよね、自分でも呆れるもん。
それでもやっと門を掻い潜り用意されていた馬車が目に入った時はなんだか一安心した。
「乗り込め。」
誘導されるままに先に乗り込み、懐から取り出した手拭いは湿ってはいるけど使えそう。
次いで乗った慶舎様は隣に座り衣についた雨粒を手で払っている。
足元も…私よりだいぶ泥が跳ねて汚れてしまった。
『どうぞお使いください。』
パリッと乾いたものではないけど、顔を拭くぐらいなら充分だ。
でも慶舎様は自らの掌や甲で顔を拭うばかり。
差し出した手拭いに視線を落とすだけだった。
「私はいい。A、お前が自分で使え。」
私より慶舎様のほうが濡れて足も汚れてしまっている。
せめてこれぐらいは、と頭からしずくとなって伝っていた頬を手拭いでそっと押さえた。
すると慶舎様は即座に私の手首を強く掴み、顔から遠ざけた。
『！余計なお世話でした、すみません。』
「…いや、そうではない。」
否定の言葉と共に、掴んでいた手首を引き寄せられ、私は慶舎様に向かい合う形でその肩にもたれかかった。
感情が表に出づらい慶舎様が何を思っているのか、正直分からなくて気を揉むことがある。
それでも耳にかかる吐息はとても熱く、その近さをまさに肌で感じ取った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 53人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ずーみん(プロフ) - いちご飴さん» 慶舎と白麗、大変遅くなりましてごめんなさい！しかも白麗に至っては激甘というわけでもなく…ちょっと心残りなのでリベンジします。リクエストありがとうございました (2021年8月6日 1時) (
レス) id: 366da61a1e (このIDを非表示/違反報告)
天空うさぎ - ずーみんさん» そ、そんなコメントしてるだけなのに私はお礼を言ってもらっていいんですかね(///ω///)♪ (2021年7月23日 10時) (レス) id: f93ac5a74a (このIDを非表示/違反報告)
ずーみん(プロフ) - 天空うさぎさん» いつも読んでくださってありがとうございます！毎度励みになっていますー！ (2021年7月22日 20時) (レス) id: 366da61a1e (このIDを非表示/違反報告)
天空うさぎ - ずーみんさん» 慶舎も読ませていただきました！漫画とは少し違った世界観が素敵な作品でした！もう大好k((殴 (2021年7月22日 12時) (レス) id: f93ac5a74a (このIDを非表示/違反報告)
天空うさぎ - ずーみんさん» ↑名前を変えました。元堕紀です。とても良かったです！やはりずーみん様の作品にははずれがないな……(≧▽≦) (2021年7月11日 11時) (レス) id: f93ac5a74a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：プラリネ | 作成日時：2020年11月26日 23時
