あの日の陽光（輪虎） ページ40
『ここが楚国かぁ。』
生ぬるい湿った風を受け、気温も高く感じる蒸し暑さ。
魏から、ひいては趙からかなり南下したところの土地では街の雰囲気も違うし、食べ物や植物など初めて見るものが多い。
けどそれだけ。
どんな珍しいものを見ても、どんなに綺麗な花が咲いていても、キラキラとしていたあの頃の日々には敵わない。
殿のご意向とは言え、まさか二度も亡命をするなんて思ってもみなかったな。
最初に魏国に亡命した時期は、とても気候が良くて思い出すだけで頬がゆるむ。
ううん、それだけじゃない。
今では二度と味わえない幸せがあの頃にはあった。
ー二年前ー
殿と一緒に趙国から亡命したのが昨年のこと。
ここ魏国では戦に呼ばれることも無く、平穏な日々を過ごしていた。
腕が鈍らないよう、いつでも戦場に出られる体づくりは欠かしていないつもりだけど…こう気候も良いとあぁ、戦がないのっていいなーと思う。
殿にあてがわれた屋敷の庭に腰を下ろし、ぽかぽか陽気に目を瞑りながら鳥のさえずりに耳を傾ける。
今現在も、中華のどこかで戦が繰り広げられているだろうにここはまるで別世界。
つい一年前まで剣を交えて戦っていたのが遠い昔のように感じた。
「捜したよ。こんなとこに居たのかい？」
音もなく後ろから近付いてきて、声をかけられたと同時に抱きしめられる。
栗色の髪が私の頬をくすぐった。
鍛えられた逞しい腕に反して、誰に対してもいつ何時も柔らかい声色が私はとても好き。
その人は年上なくせに甘えてくるけど、少し強引で簡単に彼の雰囲気に飲まれてしまう。
後ろから抱きしめたまま足を投げ出して座り、私の頭に顔を乗せた。
『輪虎さん、気配を消さないで下さい。驚きます。』
「つい癖でね。それより何をしていたんだい。」
『こう、気候も良くて平和な日々は良いな〜って。輪虎さんは物足りませんか？』
「そりゃあ殿の勇姿を見られるのは楽しみの一つではあるけれど…」
背中越しに伝わる体温と、上から聞こえる落ち着いた声に自然と顔が綻ぶ。
きっとそう遠くない日に再び剣を取る日がやってくる。
だからそれまではせめて、こうしていたい。
「確かにこうして君とのんびり過ごすのも悪くないね。」
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ずーみん(プロフ) - いちご飴さん» 慶舎と白麗、大変遅くなりましてごめんなさい！しかも白麗に至っては激甘というわけでもなく…ちょっと心残りなのでリベンジします。リクエストありがとうございました (2021年8月6日 1時) (
レス) id: 366da61a1e (このIDを非表示/違反報告)
天空うさぎ - ずーみんさん» そ、そんなコメントしてるだけなのに私はお礼を言ってもらっていいんですかね(///ω///)♪ (2021年7月23日 10時) (レス) id: f93ac5a74a (このIDを非表示/違反報告)
ずーみん(プロフ) - 天空うさぎさん» いつも読んでくださってありがとうございます！毎度励みになっていますー！ (2021年7月22日 20時) (レス) id: 366da61a1e (このIDを非表示/違反報告)
天空うさぎ - ずーみんさん» 慶舎も読ませていただきました！漫画とは少し違った世界観が素敵な作品でした！もう大好k((殴 (2021年7月22日 12時) (レス) id: f93ac5a74a (このIDを非表示/違反報告)
天空うさぎ - ずーみんさん» ↑名前を変えました。元堕紀です。とても良かったです！やはりずーみん様の作品にははずれがないな……(≧▽≦) (2021年7月11日 11時) (レス) id: f93ac5a74a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：プラリネ | 作成日時：2020年11月26日 23時
