純情Lips. (ページ4)

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わたしがボーッとしてる間に勇太がキッチンに入っていく。

「んまっ！」

今日はお母さんが夜勤の日だから晩御飯はわたしが作ったカレーだ。

お父さんはもう少し遅くなるらしいし、弟は友達の家に泊まりに行っている。

あー今日弟いないのに作りすぎちゃったなぁ。

明日にでも食べてもらおう。
二日連続カレーじゃお父さんがさすがにきついかな。

それにしても、ルーと野菜と肉入れただけのだれでもおいしくなるわたしの手作りのカレーを勇太は「うまい」と言いながら味見をする。

「ほんとうまいわ～俺ちょうど今日カレーな気分だったんだよね」

「そんなに褒めてくれてもなんも出てこないんだけど」

「•••••••••••••なんでそうなるかねぇ」

勇太は小さなため息をついて腕を組んで鍋の前に立ち、あの少し大人びた瞳でわたしを見る。

嫌そうな顔。

「なに？」

「あのなぁ、褒められたら素直に喜べばいいんだよ！」

「は？」

「いつの間にAはそんなんなったの？
もうわたしに構うなとか、俺、なんかした？」

「•••••••••••ゆうた」

「無駄に大人びてんじゃねえよ」

勇太の言うことは分からなくもない。

わたしが一方的に勇太を避けているのは事実。

構うな、って言ったのも事実。

でも、

「そっちだってそうじゃん！」

先に大人びたのは勇太の方だ。

なにが？と言わんばかりの顔で勇太はわたしを見て、何秒か見つめ合う形になってふと、久々に喧嘩なんかしたなぁと思う。

高校生になってから喧嘩どころかまともな会話をしてこなかったから。

「••••••••••意味分かんねぇ、もういい」

.

その日から勇太とはそれまで以上に会話をしなくなった。
というか、あれから一度も目すらもあってない。

いざこういう風になると、少ないながらも何気に会話してたんだなぁと思う。

寂しいなんて思わない。

ただ、何かを失ったみたいな気分で、月日が流れるのが妙に遅く感じた。