レモンチーズケーキ ページ9
○RENJUN
『まだ拗ねてるの？』
「拗ねてない」
『拗ねてますって顔に書いてあるよ』
そう言えばぺたぺたと自分の頬を触るから、隣に座る。まだ太陽が真ん中に昇る前からソファーに膝を抱えて座っていて、水滴が落ちていたペットボトルは綺麗に乾いていた。
メンバー全員が集まって練習していた昨日、振り付けの確認をしていたAが、ターンをした瞬間に少しよろけて、テヨンイヒョンが慌てて手を掴んだ。びっくりしたとへらりと笑うAに、ヒョンが言ったのだ。「まだあんまり無理しちゃだめ」って。
ヒョンがAに特別甘いことも知ってるけど、そう言った瞬間に、ジェノはきっと気付いたんだろう。頬を触り終えて、まだ口はぎゅっと閉じている。
『心配させたくなかったんだよ、活動はまだ続くから』
「…Aは、」
『うん？』
「Aは、大事なことは何にも言ってくれない」
インターホンが鳴る。画面を見ればちょうど話していた人物が映っていて、ジェノには言わずに玄関まで歩いて行く。扉を開けたら水色のブラウスを着たAがおはようと言って、リビングからガタンと音がする。
「すごい音したけど大丈夫そう？」
『多分大丈夫、服新しいやつ？』
「そう〜オンニがくれたの」
『メイクのヌナ？』
「うん、少し早いけど誕生日にって」
「…A？」
「ジェノもおはよう」
チソンいる？と聞くから首を横に振ったら、じゃあ待ってても良い？と俺たちを通り過ぎて行く。どこ行くのとジェノが聞いて、秘密と言われたからまた拗ねたような顔をする。
「今日2人とも早いね、打ち合わせ？」
「チソンイとどこ行くの」
「うん？アイス食べに行くの」
「Aの部屋にたくさんあるじゃん」
「新しく出来たところがあるんだって」
「ヌナおまたせ、！」
バタンと閉まるドアの音と一緒にリビングに飛び込んできたチソンの後ろの髪が、ふわりと舞う。
「あ、ジェノ」
「なに…？」
「誕生日何が欲しいか考えておいてね」
急かしちゃってごめんねとまた俺たちを通り過ぎて、じゃあ行ってきますと風のように出て行ってしまった。「Aがいい」と言ったジェノの小さな声は俺だけに聞こえていて、代わりに頭をくしゃくしゃに撫でておいた。
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作者名：yom | 作成日時：2023年6月21日 18時
