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○JAEHYUN
『あれ、ヒョンひとり？』
「ううん、後ろにいるよ」
『リラ？』
「今日、こっちに泊めるね」
静かな車の中で、後ろを振り返ればヒョンがくすくすと笑う。気になる？と聞かれて、素直に頷いた。
『具合悪いの？』
「元気だよ」
『そう？』
「今日は練習よりも寝ないとだからね」
明日もあるからと言って、宿舎に着けばヒョンがAを呼ぶ。Aは、テヨンイヒョンがAを起こすとき、誰よりも優しく、誰よりも丁寧に手に触れていること、知ってるのかな。手を引かれて歩いていく後ろに立って、髪を撫でたらこっちを向いた。
「…わ、」
『おはよう』
「おはようございます、いつの間にか寝てて」
『ここ、ちょっと跳ねてる』
「まあもう、帰るだけだから」
『今回も綺麗だね』
「オッパも綺麗ですよ」
『違う色にしないの？似合いそうだけど』
エレベーターが止まる音が聞こえたのは、小さな箱の中で、誰も話そうとしなかったから。声は空気に消えて行って、どうだろうねと、ドアが開く前に小さく声が聞こえた。
「…似合うでしょ、ブロンド」
『ああ、うん』
「わたし、この髪色の時がいちばん可愛いんです」
『いつも可愛いよ、きっと何色でも』
「ありがとうございます、オッパもですよ」
玄関を開けたらヘチャンが待っていて、おかえりと言ってすぐに、ただいまと返事をしたAの手を握って、後で戻ります！とまたドアが開いて行く。びっくりしちゃったとやわらかく笑うヒョンが、なんだかいつもと違う。
『俺、分からないけど』
「うん？」
『どこかで変なこと言った？』
「俺もね、Aはブロンドじゃなくたって、綺麗だと思うよ」
『…うん、そうだよね』
「髪の毛が千切れちゃったら、寂しいからね」
次の日、迎えの時間よりもずっと早く、テヨンイヒョンが玄関にいるから、どこか行くの？と声をかけた。Aと朝ごはん食べるんだ、ジェヒョニも行く？と言われたけど、大丈夫と言った。本当は、お腹が鳴ってたけど。
『ジャニヒョン、』
「うん？」
『A、嫌いなものある？』
「いきなり？」
『うん、調べても出てこなかった』
「調べたの？好き嫌いはあんまりないよ」
『じゃあ、今日Aの部屋に行って良い？』
「良いけど、いきなりどうしたの？」
ただ、にっこり笑った顔を見たいだけ。そう言ったら、ヒョンはどんな顔をするんだろう。
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作者名：yom | 作成日時：2023年6月21日 18時
