lilac 2 (ページ18)

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○

「なあに？」

『え？』

「今度は俺とAがぎこちないって思った？」

『いや、そういう訳じゃないけど、』

「けど？」

『2人って喧嘩とかするの？』

ジェノとAの喧嘩(Aは喧嘩って思ってなかったけど)は見たことがあるし、Aにヘチャンが駄々を捏ねて、それに少しだけ呆れているAも見たことがある。Aは滅多に怒らないし、怒られているのもあまり見たことがないから少し、気になってしまう。

「するよ、ヒョンが知らないところでね」

『本当に？』

「嘘だけど」

『…ヘチャナ？』

「でもAと喧嘩したらさ、きっともう戻れないの」

『どこに？』

「分かんないけど、今いるところに？」

楽しそうな声が聞こえて、振り返ればAとテンがこっちに歩いて来ていた。ヘチャナ、ロンジュンが探してたと手を引っ張って、後でそっち行くねと手を振るから、ヘチャンがその手に触れてパチンとハイタッチをする。そのままテンと倒れ込むみたいにソファーに座って、長い髪がふわりと揺れた。

「ご飯食べてたの？」

「オッパも食べますか？まだあるから」

『A、本当にもう良いの？』

「うん、ヘチャニ、何か言ってましたか？」

『いや、ううん、なんでもない』

「何、そんな顔される僕も気になるんだけど」

『いやヘチャニが、Aとは喧嘩できないって言うから、』

ぴたりとAの動きが止まる。テンが顔を覗き込んで、近いよと言えばAの肩も揺れる。睫毛が音を立てるみたいに瞬きをして、じっと見つめられたら何故か、心臓がぎゅっとなる。

「ヘチャニがそう言ってたんですか？」

「A喧嘩しないの？イライラすることないの？」

「…あんまりないかも？」

テンが綺麗に残されていた野菜を小さくまとめて、スプーンに乗せてAの目の前に持って来る。一瞬顔を顰めたけど、アイス食べるでしょと言えば口を開いた。

「…わたしよりわたしを知ってるの」

『ヘチャンが？』

「ヘチャニと離れるのは、わたしも嫌だな」

そう言った顔を、何故か2日くらい忘れられないまま、気付けばカムバックが目の前に迫っている。ジェノとこっちに歩いてきたAの、クーラーの風で揺れた前髪に触れる。また少し色を抜いたと言っていたけど、どうしてこんなにも柔らかいんだろう。瞬きをした目に、ぼんやりとした自分が映っていた。