lilac 2 (ページ16)

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○

『Aってなんで俺たちの部屋に預けられたの？』

「練習したいって言ったらしいよ」

『…あれなんだっけ、昔言われてたやつ』

「練習室の天使？」

『そうそう』

「あれ、誰が言い始めたんだろうね」

ひとつの部屋を通り過ぎたところでドアが開いて、マークと目が合う。俺たちを見てからAを見て、寝ちゃったの？と小さくつぶやいた。

『マーク、Aのこと好き？』

「えっ、？あ、えっと」

「…ストレートに聞きすぎじゃない？」

『ああ違くて、メンバーとして？メンバー？仲間？』

もしも大きな喧嘩をしたとして、話したくないとなったとしても、俺たちは一緒にいなくちゃいけない。それは俺たちが同じグループで、メンバーで、家族のような仲間だから。この2人がただ喧嘩した訳じゃないことくらい知ってるけど、それでも。

「大事だよ。当たり前に」

『そっか』

「え、それだけ…？」

『それで十分、早く寝なね』

「ああ、うん、おやすみなさい」

ジャニのポケットから出てきたカードキーを受け取って、薄暗い部屋を少しだけ明るくする。ベッドに降ろされたAを見ていたら、ゆっくり目を開いてにこにこと笑うから、ジャニが毛布をかけた。

『起きてたの？』

「俺が持ち上げた時には起きてたでしょ」

「えへへ」

さっきよりも幾分楽しそうな顔をしていて、オッパも聞きましたか？と言うから首を傾げた。マーク？とジャニが聞けば、最近見ることのなかった顔をして笑う。

「単純だけど、嬉しかったの」

『A、あのね』

「はい？」

『嫌って言っても一緒にいるからね』

「…うん？」

『俺たち、Aを1人にはさせないよ』

ジャニの手を握ったまま少しだけ顔を伏せて、急に大人びた顔をする。もう寝ようかとジャニが言っても手は離れなくて、先におやすみと言ってドアを開ける。おやすみなさいと小さな声が聞こえて、自分の部屋をノックする。

「Aは寝た？」

『多分まだ』

「そっか」

『なんだかAが、もうすぐ遠くに行っちゃうみたい』

「…どうして？」

『分からないけど、なんとなく』

次の日、おはようございますと言った顔はいつもと同じで、ジャニがよくやるように前髪を避けてみる。Aの目がこっちを向いて、アイス食べる？と聞けば、朝から食べて良いの？と目を輝かせた。