透明な泡の中で ページ13
○MARK
「何見てるの…A？」
『うん』
「見惚れてたでしょ」
『な、ちが、』
「わかるよ〜綺麗だもんねえ」
にっこりと笑ったジェミンに肩を組まれて、その間もAの表情は穏やかだ。他の仕事を終わらせて、さっきまですごく眠そうでほとんど目も開いていなかったのに、メイクから帰って来たら睫毛が綺麗に上を向いていた。最後だと言われても、実感なんてまだ湧かない。
『最近A、元気？』
「一緒にいないの？」
『ジャニヒョンたちといる方が多いから、最近』
「ヘチャニはAにくっ付いてるのに？」
『それは、そうだけど』
「マクヒョン」
『うん？』
「Aが、いつまでも可愛い妹でいる訳じゃないからね」
カットの声が掛かる。ジェミンが呼べば、ぱたぱたと瞬きを繰り返しながらこっちに歩いて来る。小さく欠伸をひとつして、俺と目を合わせた。
「何か付いてます？」
『…え？』
「何かおかしかったかなって」
『いや全然、！その、そういうことじゃない』
「Aが綺麗だったんだって」
「……本当に？」
『そうだけどそうじゃなくて、いや、うん？』
「お腹空いてる？何かとって来ようか？」
ジェミニご飯食べた？と合わせていた目をずらして、動くたびに髪が揺れる。誤解を解こうとしたけど、変な感じになりそうだからやめた。毛先まで透き通るように染められたブロンドが、照明に当てられて本当に透明のようだ。
『A』
「うん？」
『…いや、お疲れさま』
「ああ、お疲れさま…？」
「Aおいで、ご飯食べよう」
ヘチャンと自分が呼ばれて、カメラの前に立つ前にもう一度Aを見た。何かを話して、ヘチャンの手が耳に触れる。首を振ったAが、一瞬だけこちらを向いた、気がした。
「マクヒョン？」
『A、体調悪い？』
「熱あるのかと思ったんだけど、眠いんだって」
『耳触ってわかるの？』
「うん、俺がよく見過ぎなのかもね」
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作者名：yom | 作成日時：2023年6月21日 18時
