サボンは消えない ページ11
○WINWIN
Aが転んだらしいとユタヒョンから聞いたのが15分前、スタイリストのヌナたちとAが一緒に戻ってしまって、まだ打ち合わせが残っているテヨンイヒョンが段々とおろおろとし始めたから思わず声をかけて、ぱっとヒョンの顔がこっちを向く。なんだか暖かくて、それでも少し不安気な、Aを見ている時にする顔だ。
『俺が見てきます』
「多分2つ隣の部屋にいると思うから、これ持って行ってあげて、あと、」
『Aの大丈夫はあんまり大丈夫じゃない？』
「…うん、よろしくね」
絶対に多いタオルを抱えて、ドアをノックする。はーいと緩い声が聞こえた。入って良い？と確認する前にドアが開かれて、あら？ウィンウィン？とヌナがタオルを取ってくれた。Aも俺の顔を見てぽかんと口を開けているから、頭の上にふわふわのタオルを乗せる。
『そんなにびっくりする？』
「いや、その、」
『俺だってAのお兄さんだよ〜』
「うん、ありがとうございます」
頬を摘めばふにゃりと笑って、小さくくしゃみをしたらヌナが飛んで来て、もうちょっとだけ待ってねと俺たちに視線を向けた。あれが乾かなくてとAが指差した先には、それだけだと寒そうだとドヨンイヒョンが言っていた、薄いシャツが風に揺れていた。
「乾きにくい生地らしくて」
『それでずっとここにいたの？』
「流石にこのままだと、外に出れないよ」
大きなタオルを巻かれたままAは話すけど、椅子にかかっていたままのブランケットをタオルの上からぐるりと巻いた。あのシャツを着たって寒そうだなんて言われていたんだから。このまま風邪を引いたらつらいだろうし。
『あ、！どこも痛くないの？』
「痛い？」
『転んだんでしょ？ユタヒョンが言ってた』
「…転んでないですよ？」
『え？』
「確かにちょっと躓いたけど…ほら、膝が赤いだけ」
ほらほらと見せられた膝は確かに赤くて、あ、とAが声を出す前に擦りむいた傷を見つけた。痛くないですとまたタオルで隠す前に、手を取った。
『これ、テヨンイヒョンから』
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作者名：yom | 作成日時：2023年6月21日 18時
