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貴久Side
当日、会場の調理室には中々たくさんの親子が来ていた。
予想通り若い男はいないから、小山が来てくれて助かった。
しかも、小山達とペアだ。
「では、今日はみんなでハンバーグを作りたいと思います。」
「はーい！」
子供達が元気よく返事をして、さっそく作業に入った。
「まずは、玉ねぎをみじん切りといって、このように細かく切ります。」
真剣に先生の方を見ているシゲが、とても可愛い。
こんなにイキイキした顔は、久しぶりだ。
説明が終わり、シゲと祐が玉ねぎを手に取る。
シゲは、慣れた手付きで皮を剥いていった。
「慶にぃ、これどこまで脱がせればいいの？
裸になるまで？」
おい祐、その表現はやめろ。
「全部脱がせて。裸になるまで。」
そして、小山も乗るな。
お前は幼くないから許されないぞ。
チラチラと刺さる視線が痛い。
「うわー、シゲ脱がせるのうまーい！！」
やめろ祐！！シゲを巻き込むな！！
シゲも、嬉しそうにするんじゃない。
いや、褒められたんだけれども。
「兄ちゃん、みじん切りもシゲがやってみていい？」
普段は時間が無かったり危なかったりで、みじん切りをさせたことは無いが、いつもと違う場で先生のお手本を見たからか、挑戦したげにしている。
「いいよ。気をつけてな。」
子供用の包丁とはいえ、包丁は包丁だ。
見てるこっちがハラハラして手を貸しそうになるのを、シゲの成長のためだとグッと堪える。
だけどそれも最初の方だけで、それ以降は初めてとは思えない包丁捌きでみじん切りをしていた。
俺よりよっぽど料理に向いている。
「できた！！」
キラキラした笑顔を向けられ俺の顔も綻ぶ。
「シゲ、上手だな。兄ちゃんびっくりしちゃった。」
「うん！もっと大きくなったら、シゲがご飯作ってあげる！」
楽しみだ…、ただただ楽しみだ……
「慶にぃ、ガーッてするヤツは？」
「あれはここにないもん。自分で切らなきゃ。」
小山の家ではみじん切りを機械でやっているらしく、祐はそれを探している。
仕方なく、祐は包丁を手に取った。
「祐、みじん切り初めてなんだよね。」
「ウチも。危ないかなーって思ってさせてなかったんだけど、普通に上手かった。」
「好きこそものの上手なれっていうから。
ほら、祐なんかもう包丁置いてる。」
小山の視線先には、完全に飽きてシゲにちょっかいをかけてる祐がいる。
「もういいの？慶にぃやるよ？」
「祐、コツコツやるの向いてない。」
6歳にして、それを悟ったか…
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作者名：ストロベリー | 作成日時：2019年6月30日 18時
