向き合ってほしいから

68話 ページ21

No side

『じゃあ...始めるね』

始と亮を前にしてAは歌い始めた






『いつだって壊れかけた二人を繋ぐときが来る日まで


最後の歌奏でてた


僕の知らなかった世界を見つけたい


もう一回だけ受け取ってほしいから』



聴いていた2人は顔を見合わせた


始視点の歌詞にも受け取れるが、亮視点でも受け取れないことはない

そしてA視点でも



『始めから手に入れていた幸せに気づけなくて


無闇な1つの嘘が2つの愛を滅茶苦茶に踏み躙っていた


僕の世界から君をなくしたら意味がないから


君の世界まで僕が向かうから待っててくれるかな


2人の絆でもとに戻ると信じて』



『何千回僕は君のいない夜を越えて


1人の朝迎えて


最後の夢描いてた


僕の言えなかった想いを伝えたい


もう一回だけ向き合ってほしいから』




『いつも独りぼっちの時を消せた


思い出の場所に大事なものがあるから


僕がずっとずっと言いたかった言葉は』





“本当にありがとう”





『何千回僕は君のいない夜を越えて


1人の朝迎えて最後の夢描いてた


僕の言えなかった想いを伝えたい


もう一回だけ向き合ってほしいから 』




ゆっくりと流れた時間はAの歌声で満ちていた

TRIPLETの時のように拍手が上がった


始「Aっ...！」

『ぁ...うわっ！』

始はAに抱き付いた


『は、始？』

始「...A...ありがとう...」


『え...？』



始「本っっっ当に、ありがとう！！」



始は薄らと涙を浮かべていた

『...ﾌﾌｯ...ほーら、泣くな』

頭をポンポンと撫でると、泣いてねぇし...と鼻をすすりながら呟く声が聞こえた


亮「始、A」


始「ん...？」

『なに？』


亮は二人を抱き寄せた



亮「俺からも、本当にありがとう」



『兄ちゃん...』





亮「お前らの夢はなんだ？」


始「夢？」

『決まってんじゃん』



2人は声を合わせて言った

「「武道館でライブするくらいビッグになる」」



亮「ﾌｯそうか」


『もちろん、兄ちゃん含めだからね』

始「DICにも借りるつもりじゃなかったけどまぁ借りができたからさ、連れてってあげてもいいけど？」


亮「じゃあ、そうさせてもらおうか」



今3人を見た人にはただの仲良しな兄弟として写るだろう

ここにいる全員が普通とは言えない人生を送ってきたにも関わらず



そして今、誰にも言わなかったAのもう1つの夢が叶った





それは...

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