こんな容姿も君が為 ページ3
ある日、俺は美しい女に出会った。
＿大層傷つけられた靴でふらふらと歩いていたら、寂れた公園に行き着いた。
そのままベンチに腰掛け、足を揺らしていた。
すると、横から可憐な声が聞こえてきたのだ。
あまり疲弊してたもんで、この女に気づかずに座っていた。
その可憐な声で雑面の事を聞かれて、俺は質問に答えるしか選択肢が無くなったらしい。
「俺なァ、容姿がコンプレックスなんよ。男にしちゃ可愛い顔と身長で、女見たいとか罵られてんなァ。
いじめは止まらんし、顔面も身長もどうにもならん。あァ、顔はこの雑面で隠してんな？あんさんはええな、その外国人形みたいな見た目やったらいじめなんか受けへんやろ？」
いつのまにか外見に恵まれたAに暴言を吐いていた。
なのに、気づいた時にはAに抱きしめられとった。
「なん、で？」
まるで子供をあやすように慰められて、俺の涙腺は決壊した。
とたんにAへの罪悪感が湧いて押しつぶされそうになる。
涙でぐしゃぐしゃになった雑面が気持ち悪い。
でも取れなくて。Aにこの見た目を晒したく無いから。
なんてくだらんような事考えてりゃ、Aに汚い雑面を捲られた。
驚きよりも絶望よりも、雑面越しじゃないAの顔に見惚れていた。
ワンテンポ遅れて驚きと絶望がやって来て、俺は途端に死にたくなった。
Aにだけは否定された無い。
なんて、普段なら考えもせんことをAの前ではいとも簡単に思考する。
俺は、たった数分数十分で大層Aの優しさに染められてしまったらしい。
結局、Aは俺の顔を否定する事なく、なんなら俺の顔を褒めてくれた。
初めての体験に胸が高鳴る。
それと同時にAへの強い想いを自覚した。
Aだけは俺を否定せん。
Aだけは俺を認めてくれる。
もっと、教えて、Aのこと。
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作者名：レインコート | 作成日時：2024年2月18日 18時
