10jk ページ10
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諦めていた、その時。
真っ黒な影が視界に入る。
「...」
「なんですか？」
「...あー、すみません。その人、具合悪そうなので離してあげてください」
「そうですね。今から一緒に出ようと思ってたんです」
二人の間に沈黙が流れる。
「...離してもらえませんか？」
暗闇から浮かび上がる端正な顔立ちに見覚えがあった。
無言で睨み合った後、私に絡んでいた男性は舌打ちをして、強く突き放す。
「痛っ...！」
「あーあ、つまらない」
大きな溜息と共に捨て台詞を吐き、群衆の中に消えていった。
危ない場面を助けてくれた彼は、私の方を見る訳ではなく遠くに視線を向けている。そこには美男美女が集まっていて、おそらく友達である事が窺えた。
本来であれば、邪魔しちゃってごめんと軽く言えるのに、いつもと違う態度に恐縮する。
「あの、ごめんなさい、ありがとうございます」
一切、目もくれない。
声を張ったから届いてるとは思うんだけど。
今、前にいるのはジョングクだと思う。
声のトーンが低くて、最初は誰だかわからなかった。会えて嬉しいはずなのに素直に喜べないのは、発せられる心の距離。
微動だにしない姿が無関心を伝えていた。
そういえば、最近連絡をとっていなかった。
お互い忙しかったし、邪魔しちゃうんじゃないかって。
「一人ですか？」
少し間を置いて、私に話しかける。
ようやく目があったけど、氷のように冷たい視線と感情のない声がまるで赤の他人と接するようで、初めて出会った時を思い出す。
「外に出ます、」
「その状態で行くの？」
「...」
「ついてきて」
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作者名：あぽ | 作成日時：2023年12月28日 5時
